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4. 大気汚染

 

(1)大都市における大気汚染の現状

首都圏をはじめとする大都市圏等においては、自動車交通量の増加に伴う窒素酸化物(NOx)や浮遊粒子状物質(SPM)による汚染の改善が進んでおらず、依然厳しい状況にあります。

一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)等の窒素酸化物は、主に化石燃料の燃焼に伴って発生し、工場・事業場、ビル用ボイラー、自動車などその発生源は様々ですが、近年は自動車の占める割合が高くなっています。窒素酸化物は、酸性雨や光化学スモッグの原因となるばかりではなく、二酸化窒素は人間の呼吸器に悪影響を与えます。

我が国においては、二酸化窒素について、「1時間値の1日平均値が0.04ppm〜0.06ppmの範囲内またはそれ以下」という環境基準が定められていますが、大都市においては、これを上回るところが数多く存在しています。

また、浮遊粒子状物質は、工場などから排出されるばいじんやディーゼル車の排気ガス等から発生し、微小なため大気中に長期間滞留し、肺や器官への付着が進むと呼吸器に悪影響を及ぼします。

我が国においては、浮遊粒子状物質について「1時間値の1日平均値が0.10mg/m3であり、かつ、1時間値が0.20mg/m3以下」という環境基準が設定され、工場・事業場からのばいじん・粉じんや自動車からの粒子状物質等の排出規制が行われています。

 

(2)酸性雨

酸性雨とは、工場や自動車から排出された硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物が大気中で漂う間に化学反応を起こして変化した硫酸塩や硝酸塩を含んだ強い酸性の雨のことをいいます。

酸性雨の被害には、湖沼等の酸性化による魚類の死滅、土壌の酸性化による森林や農作物の死滅、地下水の酸性化、酸によって腐食する大理石や金属等で造られた建造物の溶解などがあります。

欧米では既に、酸性雨によると考えられる湖沼の生態系への悪影響や森林の衰退等の深刻な被害が報告されています。日本でも、最近、欧米と比べてほぼ同程度の酸性雨が観測され、現時点では、酸性雨による生態系への影響は明らかになっていませんが、今後注意深く観測し続けることと同時に、酸性雨による悪影響を未然に防止するための取り組みが必要となっています。

運輸省においては、酸性雨対策として、下のような対策が積極的に進められています。

 

●日本各地の酸性雨データ

(平成6年度/7年度/8年度/9年度のpH値)

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―: 未測定

*: 無効データ(年判定基準で棄却されたもの)

資料: 平成10年度環境白書

 

●運輸省における酸性雨対策

1.気象庁における酸性化物質の観測

■世界的な監視ネットワークの一翼を担う降水中の化学的成分の観測

2.硫黄酸化物、窒素酸化物の排出抑制対策

■自動車単体の排出ガス規制

■大都市地域でのより厳しい排出規制

3.発展途上国に対する協力

■原因物質の排出抑制への技術協力

 

 

 

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