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(2) 稲葉貞二・岐阜県養老町長(近鉄養老線)

鉄道利用の促進策はスピードアップと運行本数の拡大

 

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−養老町の特徴および概要について、教えていただきたい。

稲葉 岐阜県の西濃地方にあり、ご覧の通りの田園風景の広がる稲作地帯。背後には養老山系が連なり、清らかな水と豊かな緑に恵まれた風光明媚なところだ。養老山系一帯は、揖斐関ヶ原養老国定公園や東海自然歩道に指定され、中でも「養老の滝」は歴史的名勝の地として全国的に知られている。

養老町は昭和29年11月、いまの町役場がある高田町など1町9村が合併し発足した。広さは72・14平方キロメートル、人口は3万4674人(平成11年11月1日現在)。

産業は、豊かな自然をバックにしての農業が主力で、大きな事業所はスポーツ用品メーカーのミズノの養老工場があるくらい。一方、養老の滝のある養老公園をはじめ、自然を生かした観光資源には恵まれており、休日には大垣、岐阜、そして名古屋方面からも訪れる人がかなりいる。

−交通事情および鉄道の役割について、どのように考えているか。

稲葉 鉄道は近鉄・養老線があるだけで、その他の公共交通機関は民間会社のバスがあるが、運行本数が減少している。このため、町では4系統の無料巡回バスを午前、午後に1往復づつ運行しているが、利用者は多いとはいえない状況が続いている。

公共交通機関はマイカーの普及に押され、経営的に苦しくなっているので、運行本数を減らす。そうなると、さらに不便になるので、利用者の減少に拍車がかかる、といった悪循環が繰り返されている。

養老線も、私が子供のころは四日市(三重県)の工業製品を敦賀(福井県)まで運ぶ貨物列車が走っていたが、いまは旅客車だけで通勤・通学の足になっている。定時性・確実性は、バスやマイカーに比べ抜群で、朝夕の通勤・通学には必要不可欠の乗り物。ただ、日中は見ての通りガラガラなので、この面での対策は近鉄にとっても地域にとっても重要な課題だ。他方、鉄路が町を分断しているという、マイナス面もある。踏切改良工事によって立体交差にするように働きかけており、1日も早く実現していただきたい。

−養老線は、大垣-下深谷間と区間を限定し、土曜・休日および春、夏休み期間にサイクルトレインを運行している。

稲葉 アイデアとしてはいい発想だといえるし、通勤・通学のラッシュ時間帯から外れているので、まあ良いことだと思う。しかし、地域や乗客のニーズに合致しているかといえば、必ずしもそう言い切れないような気もする。

 

 

 

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