調査概要
本調査報告書は、モデル事業への参加事業者別の概要、アンケート結果の集計・分析、事業者から見た課題と今後の方向性、車両等施設改造に関する事例調査、海外事例調査報告、沿線自治体の首長インタビューの6項目を調査の骨子とし、それらの内容を元に鉄道車両内への自転車持ち込みのための提言をまとめた。調査報告書全体の概要は以下の通りである。
(1) 参加事業者別の概要
近畿日本鉄道は、実施期間中に合計248台の自転車持ち込みがあった。同社は10年7月から鉄道への自転車持ち込みを独自に実施しており、事業期間中の持ち込み台数は今回の参加事業者中、最も多かった。
福岡市交通局では、積極的なPRが功を奏し、合計11日間という限られた実施日数にも関わらず自転車持ち込みは計78台を記録した。
松浦鉄道は、伊万里〜佐世保間の各駅で3カ月にわたりモデル事業を実施したが、その間の自転車持ち込み台数は合計5台だった。
九州旅客鉄道(JR九州)は、12年1月22日〜30日の土日4日間で実施、持ち込み台数は合計47台となった。
(2) アンケート結果の集計・分析
アンケートでは、自転車利用者向け、一般乗客向け、沿線住民向けの3種類で、それぞれの対象者別に集計を行った。
アンケートで、一般乗客に対し「自転車持ち込みの内容を知っていたか」と聞いたところ、「聞いたことはある」という答えが57%、「利用区間、時間帯まで知っている」という答えが14%あり、これらを合計した自転車持ち込みに対する認知度は71%となった。しかし、実際に自転車持ち込みを利用した経験がある人は一般乗客の4%、沿線住民の0・2%だった。
一方、「自転車持ち込みを利用したことがない」と答えた人に自転車持ち込みの利用希望を聞いたところ、一般乗客、沿線住民とも50%前後の人が「利用したい」と回答、とくに大都市の一般乗客は75%の人が利用希望を表明した。
また自転車を鉄道に持ち込む場合に改善すべき点についての質問では、自転車利用者は「改札口が狭い」「ホームと列車に段差がある」、一般乗客は「列車走行中、自転車を支えきれない」、沿線住民は「一般旅客に迷惑」「改札口が狭い」などの回答が目立った。
さらに「自転車持ち込みを今後どうすればよいか」という質問に対し、自転車利用者で最も多かった答えは「利用できる時間帯を拡大」、次いで「現状の方法で継続」「利用できる本数を拡大」。一般乗客は「現状の方法で継続」が最も多く、続いて「利用できる時間帯の拡大」「利用できる本数の拡大」。沿線住民は「利用できる時間帯の拡大」がトップで、続いて「現状の方法で継続」「利用できる時間帯を拡大」の順だった。