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以上から、船舶の規模によってバリアフリー施設整備の上での前提条件等は異なることが考えられる。

船舶の規模については、既存の資料で調査することが可能であり、普遍的な分類基準として類型化することが可能である。

 

2]船種による分類

 

一般に旅客船においては、舷門から直接甲板室に乗船することが可能なケースが多いが、フェリーの場合、車両甲板の上層に甲板室が設置されているケースが多く、車両甲板から乗船した場合には船内では必然的に垂直移動が必要となる。

以上から、船種の違いによって、バリアフリー施設整備の上での前提条件等は異なることが考えられる。

船種については、既存の資料で調査することが可能であり、普遍的な分類基準として類型化することが可能である。

 

3]利用目的による分類

 

船舶の利用目的は、生活を目的とした航路から、観光を目的とした航路、船旅自体を楽しむことを目的とした航路まで多種多様である。例えば、生活を目的とした航路では、船内での利用者の行動ニーズは「乗船→着席→下船」といった基本的な行動以外は、トイレの利用程度に限定されると考えられる。しかし、船旅を楽しむことを目的とした航路では、船内での利用者の行動は、基本的な行動に加え、トイレの利用はもちろんのこと、遊歩甲板に出て景色を楽しんだり、食堂で食事をする、船内の娯楽施設を利用する、寝台等で就寝する等の様々な行動ニーズが考えられる。

以上から、利用目的の違いによって、利用者の行動ニーズは異なり、これに伴いバリアフリー施設の整備ニーズについても異なってくることが考えられる。

しかし、船舶の利用目的は、同一の離島航路においても当該離島の住民にとっては「生活目的」であるが、当該離島を訪れる観光客にとっては「観光目的」となるように、利用者のニーズの違いに依存し、普遍的な分類基準として類型化することは難しいと考えられる。

 

4]乗船時間による分類

 

乗船時間の違いによって、船内での利用者の行動ニーズは異なるものと考えられる。

例えば、乗船時間が30分以内と比較的短いケースでは、利用者の行動は、「乗船→着席→下船」といった基本的な行程に限定されることが多く、トイレを利用する、遊歩甲板に出て景色を楽しむ等の行動ニーズはあまり多くないものと考えられる。

一方、船内での利用者の行動は、基本的な行動に加え、トイレの利用はもちろんのこと、遊歩甲板に出て景色を楽しんだり、食堂で食事をする、船内の娯楽施設を利用する、寝台等で就寝する等の様々な行動ニーズが考えられる。

以上から、乗船時間の違いによって利用者の行動ニーズは異なり、これに伴ってバリアフリー施設の整備ニーズについても異なってくることが考えられる。

しかし、乗船時間の違いによって、どのような行動ニーズがあるかについては、高齢者や障害者等の個人毎の身体的状態等によって異なると考えられる。よって、乗船時間の違いを普遍的な分類基準として類型化することは難しいと考えられる。

 

以上の検討の結果、船舶の分類基準については、船種による違いを考慮しつつ船舶の規模により分類を行うことが妥当と考えられる。

 

 

 

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