1. 研究の概要
1.1 研究の目的
わが国においては、以前よりホームからの転落防止や軌道内進入防止など安全確保の要望が絶えない。さらに今後の高齢化社会への移行と移動制約者の社会活動への参加などの状況を踏まえると、ホーム転落防止方策の早期確立は重要な課題である。
一方、列車運転のワンマン化や若年労働者の不足への対策として、ホームの駅係員によらない安全確保の手段が今後益々重要になってきている。
このための手段として、ホーム縁端部に壁またはフェンス状のしきりにドアを設け、乗降時にドアを開閉するホームドア・システム(以下「ホームドア」と略す)がある。
国内では、以前より無人運転やワンマン運転の新交通システムにおいて、ホームドアが設置されてきており、さらに最近になって、地下鉄の一部の新線で設置されている。
しかしこれらのホームドアは、柱とはりを設けて背丈以上の壁とドアからなる構造のスクリーン式といわれる方式で、ホーム強度に対する重量面、営業運転の合間での施工に対する構造面から、既設駅への設置は難しいものと考えられる。
これに対し、ホームドアを腰丈の高さにした構造の可動柵すなわち「腰丈式ホームドア」は既設駅への設置が比較的容易と考えられる。しかし、腰丈式ホームドアにおいても既設駅への設置が短時間に施工できる容易な設置性や、さらなる重量の軽減、低コスト化等の課題がある。
そこで、新線建設時のみならず、既設路線での設置がより容易で、低コストで保守性に優れた腰丈式ホームドアを開発するとともに、今後このシステムを導入していく際に、共通してチェックする安全性や寸法等の標準的な方式や基準を整理し、これにより本システム導入の容易化を図ることとした。
本事業は平成10年度から2カ年の予定で着手し、平成10年度は各種ホームドアの調査、腰丈式ホームドアの概略仕様の検討、腰丈式ホームドア要素部分の設計・製作・試験・評価を行った。
本年度は、腰丈式ホームドアをより具体化し、既設線対応の腰丈式ホームドアの実用化を図るために、既設線への設置容易な軽量化試作機の製作、確認試験の実施、施工方法の検討、異種車両対応ホームドアの検討、安全確保方策の検討などを研究の目的とした。