はじめに
本報告書は日本財団の平成11年度補助事業として実施したホームドアシステムの研究開発事業についてまとめたものである。
わが国において、これからの高齢社会と移動制約者の社会活動への参加などの状況を踏まえると、鉄道における安全で快適なモビリティの実現が強く求められている。
特に、視覚障害者がホームから線路に転落する事故、列車への接触事故が発生していることを考えると、ホームからの転落・接触防止策の確立は緊急の課題である。
一方、多くの鉄道駅のホームは、特にラッシュ時では通勤・通学者であふれ、次々に到着する列車からの乗降客の安全を人手と放送等により確保している。
これに対し鉄道事業者は、駅務員を増やすなど対応を図っているが、将来の若年労働者の減少を考慮すると、人手による対応が困難になることが予想され、今後は縮小せざるを得ない状況にあり、安全確保の重要な課題となってくる。
そのために、設備面からの転落防止策として、ホームに沿って線路とホームとを安全に仕切る鉄道駅のホームドアシステムを新設の駅はもとより既設の駅でも設置する機運が生じてきている。
本事業は、これらの状況を踏まえ、低コストで既設駅にも設置しやすく、保守性にも優れ、かつ有効スペースを確保できるホームドアシステムの研究開発を行い、早期に実現化へ向けて実施した。
具体的には、昨年度に研究開発したホームドアシステムの概略仕様、要素部分の研究、試験、評価の結果を踏まえて、広く普及するためより軽量化したホームドアの開発、異種車両対応ホームドアの検討、安全確保方策の検討、施工方法の検討を行った。その結果、既設駅により低コストで設置する可能性を見い出すことができた。
ここに本研究にご協力いただいた関係各位に感謝の意を表するものである。
なお、本事業は当財団内に学識経験者、運輸省、鉄道事業者、鉄道関係協会、メーカー及び当財団などの関係者からなる委員会を設け、調査研究の一部については社団法人日本鉄道電気技術協会に委託して研究を行ったものである。
平成12年3月
交通エコロジー・モビリティ財団
会長 大庭浩
