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開会式

 

主催者挨拶

日本保育協会

 

講演I

多文化理解と保育

萩原 元昭(江戸川大学教授)

 

1980年代から外国人労働者や留学生など外国籍の親や乳幼児の増加は、従来のマイノリティ(minority)としてオールドカマー(old comer)に対する同化政策ないし欧米文化に学ぶ国際理解といういわば「国際化」ないし「国際理解」のイメージの変更をせまられることになった。今日は、多様な文化や価値観が共存し、異質な文化的背景を持つ民族的ないし人種的アイデンティティー(identity)が保証されるいわば多文化社会(multi-culturalsociety)への質的転換が課題となっている。外国籍の乳児や幼児の言語や文化が尊重され、表現の機会が大事にされると同時に、日本の幼児も外国籍の幼児も「小さな人間」として相互に助けあえるような保育が期待されるようになった。

本講ではマルチ・カルチャリズム(multi-culturalism)にもとづく保育の基本的な考え方とりわけ、外国籍の乳幼児の心理的要求に適応する保育環境のあり方を中心に述べることにしたい。

1] 働いているのだから、オムツぐらい洗って愛情を示すべきだ。

2] アイロンをかけた美しいシーツで美しい夢を見せましょう。

3] 一人だけ特別の扱いはできない。

この3例とも、保育者が外国籍の親に語った言葉であり、どちらかといえば「郷に入れば郷に従え」式の自国の文化や言葉を、外国籍の親に一方的に押しつけるという支配的な姿勢がうかがわれる。

3例とも共通している点は親から保育者へのフィードバックが弱いコミュニケーション体系を示唆している。

以上の事例を参考に、マルチカルチャリズムにもとづく園環境のしくみを検討することにしたい。

次の表におけるBタイプが多文化主義(multi-culturalism)にもとづく園環境であるのに対し、Aタイプは単一文化下の園環境と一応考えておきたい。

 

 

 

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