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■事業の内容

長期にわたる景気の低迷、為替の変動、産業の空洞化等の経済環境の変化、また高齢化、少子化、嗜好の成熟化等の社会変化に対応するためには、運輸産業においても競争による企業活動の工夫を生かした自由な企業活動を促進することが求められている。
 運輸産業においては、これまで累次にわたり企業活動の活性化、利用者利便の向上等を目的として規制緩和措置等が実施されてきている。しかしながら、これらの措置の実施により利用者利便がどの程度増進したか、企業活動がどの程度活性化・効率化されたか等についての十分な検証はなされていない。
 本事業は、従来の規制緩和をはじめとする施策が運輸産業の市場実態、競争状況等にどのような効果をもたらし、影響を与えているかについて検証を行った。
(1) 調査項目
 [1] 規制緩和の影響波及の想定
 [2] 影響波及の実態把握
 [3] 消費者余剰の推計
 [4] 経済波及効果
 [5] 企業経営への影響把握
 [6] 海外の実態調査
 [7] 規制緩和の諸効果の整理
(2) 実施方法
 委員会を設置し、それぞれの調査方法の決定、調査内容の検討を行い、海外調査を実施し、作業の一部を調査専門機関に委託した。
(3) 実態(海外)調査
 海外における規制制度、規制制度の実状と規制緩和の効果と影響の把握
 [1] 期 間  平成10年10月31日〜11月8日(9日間)
 [2] 訪問先  英国
■事業の成果

本調査の成果としては、これまで十分取り扱われることのなかった社会的規制の緩和効果を取り上げたことが挙げられる。これまでいくつかの規制緩和に関する文献が発表されているが、その多くは参入規制や価格規制、外資規制といった経済的規制の緩和効果を研究調査したものであった。しかし、安全規制や環境保全基準といった社会的規制を分析した文献が少ないため、本調査はその試験的な試みを提示した点にも意義を見いだせる。

 また、報告書で提示したように、検査認証制度関係の規制緩和措置について、便益帰着連関表を提示したことも初めての試みである。便益帰着連関表は、経済主体間で純便益がどのように帰着していくかを整理したもので、政策意志決定において1つの材料を提供するものである。実際、公共投資の見直し措置等では、対象事業の費用便益分析を行い、その便益帰着状況を見ることにより、対象事業を見直すべきかどうかを検討するという動きが現れている。他国の状況を見ると、英国などでは、政策や制度変更に際しては、その措置の内容、背景、費用便益評価等を示したコンサルティング・ペーパーを提示し、国民の理解・合意を得ようと努めている。ま このため、将来わが国でも検査認証制度のあり方について、費用便益分析や便益帰着連関表等の客観的な根拠を検討するような事態も想定される。現段階からこのような試みを行ったことには大きな意義があり、また便益帰着連関表を提示できたことは大きな成果と考えられる。





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