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■事業の内容

わが国の周辺海域における海上犯罪の現状及び国際的にも重大な社会問題となっている拳銃を使用した凶悪犯罪の多発、麻薬・覚醒剤による薬禍の増大、密入国の増加等による社会不安の増大等、これら海上犯罪が国民の生活に深刻な影響を与えている。
 これらの海上犯罪を未然に防止するとともに、万一犯罪が発生した場合には迅速に海上保安機関により処理されることにより、犯罪の影響が広く国民に及ぶことを防止する必要がある。
 このため、水際での未然防止等が緊急の課題となっており、関係者や一般市民に対し、防犯意識の高揚を図り、安全で快適な環境づくりを目指すとともに、犯罪が発生した際には、直ちに適切な対応がとれるよう海上保安部署への通報体制の確立を図るため、本事業を実施した。
(1) 海上防犯連絡協議会の運営
 当協会の中央本部に設置された「海上防犯連絡協議会」を6月23日開催、平成10年度海上防犯活動等の事業計画を策定し、「海上防犯連絡協議会」の構成団体及び当協会地方本・支部に対し周知した。
 [1] 構成メンバー
  a.構成団体(9団体、委員9名)
    (社)日本船主協会、(社)日本旅客船協会、日本内航海運組合総連合会、日本タンカー協会、(社)大日本水産会、全国漁業協同組合連合会、(社)日本船長協会、(社)日本マリーナ協会、(社)日本外洋帆走協会
  b.官庁側委員(7名)
    運輸省海上交通安全局国内旅客課長、同局国内貨物課長、海上保安庁警備救難部参事官、同管理課長、同警備第一課長、同警備第二課長、同海上環境課長
  c.事務局関係者(12名)
  [2]審議決定事項
  a.平成9年度海上防犯活動実施状況について
  b.平成10年度海上防犯活動実施方針について
(2) 海上防犯地方連絡会議の運営
 当協会の地方本部に設置された「海上防犯地方連絡会議」を開催し、海上防犯指導員が行う防犯指導の連絡を行うとともに、「海上防犯連絡協議会」の策定した事業計画の遂行について協議した。
 [1] 開催地方本部(11ヶ所)
   北海道、東北、関東、東海、神戸、広島、門司、舞鶴、新潟、南九州、沖縄の各地方本部所在地区
 [2] 構成員
   各地区毎に14〜17名とし、管内の関連団体及び関係官庁の職員で構成
 [3] 議題(主なもの)
  a.海上犯罪の現状
  b.海上防犯活動実施計画・実施方針
  c.海上防犯実施状況
  d.ビデオ・その他
(3) 海上防犯指導員の配置と防犯活動
 一般旅客船の多い港、海洋レジャーの活発な海域等に係る全国所要の地に所在する当協会の19支部に、海上保安庁の推薦に基づき当協会で委嘱した海上防犯指導員35名により、海上保安部署の指導を受けながら海上防犯活動を実施した。
 [1] 海上防犯指導員の配置数
   小樽2、函館1、塩釜2、青森1、横浜3、横須賀2、名古屋2、鳥羽1、大阪2、神戸3、広島2、尾道1、香川1、門司2、福岡2、舞鶴2、新潟2、南九州2、沖縄2(地方本部)
   計 1地方本部・18支部 35名
 [2] 海上防犯活動
   防犯パトロール、訪船指導、旅客船会社の営業所等の巡回連絡、海上における防犯意識の高揚に関する啓蒙活動、海上犯罪認知の際の海上保安部署への通報等
(4) 海上防犯連絡員の配置
 海上防犯連絡員は、海上における犯罪を認めた場合の海上保安庁又は海上保安官連絡所への通報を行うもので、所轄海上保安部署の指名により、所属支部から「海上防犯手帳」を交付した。
 なお、地方本部別「海上防犯手帳」の配布部数は次のとおりである。
北海道1、東北6、関東4、東海6、神戸4、広島10、門司6、舞鶴4、新潟1、南九州4、沖縄4 合計50
(注)配布数は、海上防犯連絡協議会の決定によった。
(5) 海上における防犯意識の高揚
 [1] 海上防犯講習会の開催
  a.海上防犯講習会の開催
海上防犯地方連絡会議の主催により、カーフェリー、海運会社、マリーナ、漁協等を対象とし、各地方本部・支部において防犯講習会を開催した。
   (a) 議題(主なもの)
   イ.海上防犯について
   ロ.警備救難業務について
   ハ.海上犯罪と防止対策
   ニ.海上防犯の一般的事項について
   ホ.海上保安部署への通報体制の確立
   ヘ.最近の犯罪傾向について
(6) 周知宣伝資料等の作成、配布
 [1] 海上防犯ポスターの配布
   海上防犯を呼びかけるポスターを作成して、全国の各地方本部、支部に配布し、カーフェリー・旅客船及び先客待合所・マリーナ等に掲示した。
   なお、地方本部別配布枚数は次のとおりである。
   北海道 東北 関東 東海 神戸  広島 門司 舞鶴 新潟 南九州 沖縄 計
    1,000 630 870 440 930 1,000 1,100 630 440 620 340 8,000枚
 [2] 海上保安官連絡所の増設
   アクリル製の看板を作成して、全国の各地方本部、各支部に配布し、管内の営業所・マリーナ等に設置した「海上保安官連絡所」に提示した。
   なお、地方本部別配布数は次のとおりである。
   北海道 東北 関東 東海 神戸 広島 門司 舞鶴 新潟 南九州 沖縄 計
     1   1   8   1   1   5   15   5   1    7   5   50
 [3] 通報用テレホンカードの配布
   海上防犯認知の緊急時の通報体制強化のため、海上保安本部の電話番号を登録したオートダイヤルカードを海上防犯指導員、同連絡員等に配布した。
  北海道 東北 関東 東海 神戸 広島 門司 舞鶴 新潟 南九州 沖縄 計
   60   60   130  50   100  80 90   90   40   100   40   840
 [4] ステッカーの配布
   海上防犯意識の高揚を図った図柄と標語に、所轄海上保安部の電話番号を記載したステッカーを作成、配布した。
   なお、地方本部別配布枚数は次のとおりである。
   北海道 東北 関東 東海 神戸  広島 門司 舞鶴 新潟 南九州 沖縄 計
   800   700  800  400  600 1,000 1,000 400 400 500 200 6,800
■事業の成果

海上防犯事業活動は11年を経過し、海上防犯指導員の配置された各海上保安部署の指導を受けながら活発に実施するとともに、新たに海上防犯連絡員を増員し指導員・連絡員等に通報用テレホンカードを配布し、海上保安部署又は海上保安官連絡所への犯罪通報体制の拡充を図ったほか、全国の支部で海上防犯ポスター・ステッカーを掲示する等活発な啓蒙活動を実施したことにより、十分な成果を上げたものと思われる。
(1) 海事関係諸団体の参加を得て、海上防犯活動の推進母体となる「海上防犯連絡協議会」を当協会の中央本部主催で、また、地方における防犯活動の中核となる「海上防犯地方連絡会議」を全国の各地方本部主催で開催し、海上防犯活動を推進したが、構成員である船会社その他海事関係団体の協力を得ることができたことは、安全で快適な海上環境づくりに大きく寄与したものといえる。
(2) 海上防犯指導員が、部署の指導を受けて実施した防犯パトロール、本部・支部で開催した海上防犯講習会、そして全国に配布されたポスター、ステッカー等により、海事関係者は勿論のこと広く一般に至るまで、海上防犯思想の普及啓蒙に実効があったものと思われる。
 なお、平成10年4月から平成11年3月までに実施された海上防犯活動実績件数は次のとおりである。
 [1] 防犯パトロール              1,318件
 [2] 訪船指導                   276件
 [3] 海上保安官連絡所等巡回連絡          351件
 [4] 啓蒙活動                   313件
 [5] 認知通報(海上防犯指導員によるもの)      48件
       合 計             2,306件
(3) 犯罪通報については、「海上保安官連絡所」、海上防犯指導員、海上防犯連絡員から不審者若しくは密漁事犯等に係る情報が寄せられており、全国に配布され、提示された海上防犯ポスター(通報先の海上保安部署電話番号記載)、ステッカー(通報先の海上保安部電話番号記載)及び海上防犯指導員・連絡員等に配布した通報用テレホンカード(通報先の管区海上保安本部電話番号記載)と相俟ってその効果が現れたものと思われ、今後より一層の成果が期待される。





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