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■事業の内容

船舶のバラスト水に混入して移動する海洋生物が、本来生息していない海域に侵入・帰化することにより、当該海域における貝毒の発生、生態系の破壊に対して生物学的に影響を与えることが、新たな海洋汚染問題の一つとして取り上げられている。
 当該問題については、国際海事機関(IMO)の場においてその対応に関する、審議が行われている他、豪州等においては、自国の水域に入域する船舶に対し、外洋でバラスト水を交換させる自主規制を実施している。
 また、米国、豪州、英国等の国々においては、安全面・経済面等での問題が指摘されているバラスト水交換方に変わる手段として、温度管理法、光処理法、電気処理法等に関する調査研究が行われている。
 本事業は、平成9年度の代替手段の比較検討において、最も実用性が高いと評価される方法を中心に実船への適用を検討するとともに、実用システム・装置設計の基礎となるデータを蓄積し、当該問題に関する合理的な解決策及び今後の国際的な対応に寄与することを目的として実施した。
(1) 調査の方法
学識経験者、関係団体、関係官庁等からなる委員会を設置し、海事関係団体及び関係研究機関の協力を得て実施した。
また、一部専門的な技術及び知見を必要とする事業内容については、専門の調査研究機関に業務を委託して実施した。
 [1] 委員会による検討
  a.第1回委員会を開催し、次の事項を検討した。
   (a) 実験法案と実施経過報告
   (b) その他
  b.第2回委員会を開催し、次の事項を検討した。
   (a) 実験の実施経過報告
   (b) MEPC42におけるバラスト問題の審議状況
   (c) 今後の課題と作業計画
   (d) その他
  c.第3回委員会を開催し、次の事項を検討した。
   (a) 報告書の内容
   (b) その他
 [2] 専門の調査研究機関へ業務を委託しての実施
  a.電気処理法の海洋生物殺滅効果
    国内2港湾の海水中に含まれる各種生物と有害プランクトン分布海域の海底に堆積する休眠胞子(シスト)を採取し、電気処理装置を通過させる室内実験を実施した。
  b.電気処理法による船体及び環境への影響
    国内2港湾の海水を電気処理装置を通過させる室内実験を実施した。
  c.実用化に向けての課題の検討
    上記実験結果を用いて行った。
(2) 調査項目及び内容
 [1] バラスト水管理規制に関する情報の収集
   国際会議におけるバラスト水管理規制についての審議状況に関する資料を収集した。
 [2] リバラスト代替手段の実験
   電気処理法の効果と船体及び環境への影響について実験を実施した。
(3) 報告書の作成
 [1] 題 名  平成10年度船舶のバラスト水管理方策に係る調査研究報告書
 [2] 規 格  A4判 印刷製本
 [3] 数 量  100部
 [4] 内 容  本年度調査研究に関する包括的な報告書
 [5] 配布先  委員、関係官庁及び関係団体等
(4) 委員会の開催 船舶のバラスト水管理方策に係る調査研究委員会 3回


■事業の成果

本事業の目的とする外洋上におけるバラスト水交換(リバラスト)の代替手段の検討として、従来の方法とは異なる微弱電力による電気処理法の海洋生物殺滅効果、船体及び環境への影響実験を行って、実用化に向けての有効性と課題について検討し取りまとめた。その結果、殺滅効果及び各種影響に関しては、有効なリバラスト代替手段になり得ると評価された。最終的なシステムの設計には、今後、実船への適用を念頭に置いた多くの実験・検討が必要であるが、科学的、客観的な視点での検討結果は、今後の国際規制に反映できるものであり、関係機関、海運界及びその関係者が今後の対策を考える際の参考資料として、調査研究の初期目的を満たすものであって、十分な成果を得た。





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