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■事業の内容

近年、船舶へのコンピュータ、エレクトロニクス技術等の導入に伴い、舶用機関の高度化の進展は、目覚ましいものがある。一方、内航船等における熟練船員の減少に伴い、舶用機関整備の陸上移管等舶用機関整備業界に期待される役割は、質量ともに年々高まっている状況にあり、また、船舶の心臓部に該当する舶用機関の整備は、船舶の安全な航行に不可欠なものであることから、舶用機関整備技術者に対してより高度な技術及び専門知識が求められている。
 このため、舶用機関整備技術者の技術レベルの向上を図ることが関連業界にとっても今後益々重要なものとなっている。
 本事業は、このような観点から、当該整備技術者に対して講習会及び検定試験を実施することにより、知識及び技量を有した舶用機関整備士を育成し、整備技術者の技術レベルの向上を図るとともに、当該資格検定制度を船舶の安全確保のための制度として位置付け、船舶検査の合理化、ひいては船舶の航行の安全確保に寄与するため事業を実施した。
(1) 実施内容
講習による指導及び資格検定を通じ、資格者としてふさわしい知識・技量を備えた舶用機関整備士を育成するとともに、舶用機関整備業界の技術水準の向上を図るため、今年度は、以下の事業を実施した。
 [1] 資格検定
  a.新規講習会
   (a) 1級舶用機関整備士新規講習会
    舶用機関の整備技術に関し、高度な技能・知見を有するリーダーの育成を目的として、昨年度に引き続き2級舶用機関整備士資格所有者で1級舶用機関整備士の受験資格を満足するものを対象に、新規講習会を実施した。
   イ.開催場所全国8地区
   ロ.講習期間  3日
   ハ.講習内容  整備工事の管理、整備技術及びトラブルシューティング、船舶安全法等について
   ニ.講  師  エンジンメーカー及び各運輸局等に依頼及び一部当会職員
   ホ.受 講 者  160名
   (b) 2・3級舶用機関整備士新規講習会
    新たに3級舶用機関整備士を受験するもの又は3級舶用機関整備士資格者であって2級舶用機関整備士資格を受験するものを対象に新規講習会を実施した。
   イ.開催場所  全国9地区
   ロ.講習期間  2級・3級各2日
   ハ.講習内容  舶用機関の整備技術及び船舶安全法等について
   ニ.講  師  エンジンメーカー及び各運輸局等に依頼及び一部当会職員
   ホ.受 講 者  2級 264名、3級 260名 計524名
   (c) 検定試験
    新規講習会受講者に対し、1級については学科試験、実技試験及び面接を、2・3級については学科試験及び実技試験を実施し、合格者には、その技量を証明する資格証明書を交付した。
   イ.学科試験
    (イ) 開催場所  1級全国8カ所
            2・3級全国9カ所
    (ロ) 試験期間 1日
    (ハ) 受 験 者  1級 174名
            2級 285名
            3級 272名
            合計 731名
   ロ.実技試験及び面接試験(1級のみ)
    (イ) 開催場所  1級 4カ所(北海道千歳市、滋賀県長浜市、神奈川県相模原市及び熊本県宇土市)
            2・3級 全国9カ所(学科試験と同日開催)
    (ロ) 試験期間 1級 1日(千歳市1日、長浜市2日間、相模原市2日間及び宇土市2日間)
            2・3級 1日(学科試験と同日開催)
   (ハ) 受 験 者  1級  87名
            2級 285名
            3級 272名
            合計 644名
   (d) 更新講習会
    本資格制度は、4年で更新することになっているため、平成6年度に資格を取得した2級及び3級整備士に対し、技量のレベルアップを図るため、更新講習会を実施した。
   イ.開催場所  全国11地区 15会場
   ロ.講習期間  2級・3級各1日
   ハ.講習内容  高速機関の整備取り扱い、最新のディーゼル機関及び補機関等について
   ニ.講  師  エンジンメーカー等に依頼及び一部当会職員
   ホ.受 講 者  2級 119名
           3級 259名
           合計 378名
 [2] テキストの作成
   1級・2級及び3級の指導書、検定用問題及び2・3級用更新用テキストを次のとおり作成した。
  a.規 格  A4版
  b.部 数  1級指導書 400部  1級検定用問題集 300部
         2級指導書 450部  2級検定用問題集 450部
         3級指導書 450部  3級検定用問題集 450部
         2・3級用更新テキスト 700部
  c.配布先  受講者、関係官庁、講師等
  d.内 容
   (a) 1級指導書
     第1章 整備とその基本
     第2章 整備工事
     第3章 ディーゼル機関各部及び付属装置の整備
     第4章 燃料・潤滑油・冷却水
     第5章 据え付けと運転
     第6章 運転状態の診断とトラブルシューティング
     第7章 軸系装置及びプロペラ
     第8章 船舶安全法
    補足資料 整備関連基礎事項
   (b) 2級指導書
    第1章 ディーゼルエンジンに関する基礎知識
    第2章 ディーゼルエンジン及び付属装置の構造機能と分解整備
    第3章 軸系装置及びプロペラ
    第4章 図面の見方、書き方及び材料
    第5章 船舶安全法
   (c) 3級指導書
    第1章 ディーゼル機関の基礎知識
    第2章 ディーゼルエンジンの構造・機能と整備
    第3章 軸系装置及びプロペラの概要
    第4章 計測検査器具の取り扱い・検査方法
    第5章 船舶安全法
   (d) 1級舶用機関整備士問題集
第1章整備とその基本
    第2章 整備工事
    第3章 ディーゼル機関各部及び付属装置の整備
    第4章 燃料・潤滑油・冷却水
    第5章 据付と運転
    第6章 運転状態の診断とトラブルシューティング
    第7章 軸系装置及びプロペラ
    第8章 船舶安全法
   (e) 2級舶用機関整備士問題集
    第1章 ディーゼルエンジンに関する基礎知識
    第2章 エンジン及び付属装置の構造機能と分解整備
    第3章 軸系装置及びプロペラ
    第4章 図面の見方、書き方及び材料
    第5章 船舶安全法
   (f) 3級舶用機関整備士問題集
    第1章 ディーゼル機関の基礎知識
    第2章 ディーゼルエンジンの構造・機能と整備
    第3章 軸系装置及びプロペラの概要
    第4章 計測検査器具の取り扱い・検査法
    第5章 船舶安全法
   (g) 舶用機関整備士更新テキスト
    第1章 技術動向
    第2章 新技術その他
    第3章 船舶安全法
    第4章 トラブル予防
    第5章 計測検査器具の取り扱い・検査方法
    第6章 図面の見方(図法の基礎)
■事業の成果

近年、船舶へのコンピュータ、エレクトロニクス技術等の導入に伴い、舶用機関の高度化の進展にめざましいものがあり、舶用機関整備業界に期待される役割は、質量ともに年々高まってきており、舶用機関整備技術者に対しより高度な技術及び専門知識が求められている。

 このため、舶用機関整備技術者の育成及び技量向上を図ることが今後益々重要になっている。

 特に業界が長い間念願としていた舶用機関整備士の船舶検査制度の中での活用が、サービスステーション制度として平成9年1月から試行がスタートした。この制度で要求されている人的要求は、当会が実施している舶用機関整備士制度を期待している。

 本年度前半には、1級舶用機関整備士の検定を行い、全国で新たに79名を1級整備士として認定した。

 年度後半には、従来行っている2・3級の新規講習会及び検定試験を、また、有資格者で資格の更新時期が来ている者には、更新講習会を実施し、新たに2級舶用機関整備士として174名を、3級舶用機関整備士として200名を認定した。これにより1・2・3級舶用機関整備士として登録された人数は、2,862名となった。

 これらの事業を通じ、業界全体の整備技術が向上し、業界の振興に寄与するとともに、船舶の安全航行に貢献し、海難防止にも寄与すると確信する。





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