
■事業の内容
本事業は、予測の高度化による振動推定の迅速化と精度向上を図るため、数値解析技術、新簡易解析法の研究を行うとともに、マルチメディア・データベースを構築し、振動に関する実用的な設計指針及び設計評価法を得ることを目的に、実施した。 (1) 設計初期段階における振動予測 [1] 数値解析技術の研究 船体節振動や上部構造の前後振動に関して、1500個積コンテナ船並びにアフラマックスタンカーの2船種に対して航走時における起振機実験を行い、詳細FEM解析により固有振動数解析のモデル化指針項目をある程度得ることができた。 [2] 振動解析の簡易化に関する研究 初期設計において船体節振動数や上部構造固有振動数を推定するため、船体節振動と上部構造に対して次の簡易的2手法を検討した。 ・「従来式と実船計測値から回帰式により修正した方法やニューラルネットワークを適用した方法により迅速に又ある程度よく算出できる簡易推定法」 ・「簡易箱形前後テーパー板船体モデル及びエンジンフラットまで含む上部構造簡易立体板モデルにてモデル化条件を種々変化させて実船計測値と比較を行う簡易FEM解析法」を提案し、その有効性あるいは実現可能性について検討した。 (2) 統一計測法による振動データの収集 [1] 振動計測に関する調査検討 振動設計支援データベースの構築に必要な基礎データとなる節振動、居住区前後左右振動、主機架構振動及びドジャーウイング前後に対する固有振動数やその時の加速度及びモードの検出を目的として、昨年度構築した統一計測により12隻の船舶を対象に試運転航走中の多点同時計測を行った。また、より簡易な方法としてポータブル計測器による計測も一部行い、有効なデータとして役立つか検証した。 [2] 振動計測データ分析に関する調査検討 上記[1]で得られた船体節振動に対する次数毎の共振曲線及び位相曲線、節振動モード曲線等のデータを整理・解析し、居住区前後左右振動、主機架構振動、ドジャーウイング前後の振動加速度及び振動数もデータベースに格納すべく統一整理表にまとめた。 (3) 設計データベースの構築(データベースに関する調査) 船舶振動設計に使用するデータベースは、「船体振動文献」、「振動トラブル」、「振動計測データ」の3つで構成され、本年度はこれらのデータに対して諸検討を行い、表計算であるMS−EXCELのデータファイルとして収録した。これらのデータは振動予測や防振対策としての振動設計支援ツールと有機的に関連付けてデータを有効に加工利用できる動的利用法を今後考えて行くこととしている。 なお、この支援ツールを構成する要素として、「メイン振動項目ページ」、「振動設計フロー」、「船体節振動」、「上部構造振動」、「振動基準」、「用語集」等15項目考慮中であり、本年度これを支援システムのディレクトリーに格納した。現在インターネットブラウザーを使用して検索利用できるものを開発中である。
■事業の成果
本事業は振動予測技術の高度化を目的として実施し、下記の成果を得た。 (1) 設計段階での振動推定法として、先ず精度のよい詳細FEM解析をアフラマックスタンカーとコンテナ船の2隻に対し、種々のモデル化条件にて実施し船体固有振動数を得た。 (2) 次に、簡易推定法を検討して船体固有振動数算出は実船データとの比較において約8%の精度で推定できることが分かった。また、熊井式を元にした簡易算式は簡易表計算形式ソフトに組み込んで推定の便を図った。上部構造の振動数算式は従来の式より精度よい成果を得たが、検討した実船データ数が少なかったので、必ずしも精度的によくない。 (3) 解析中間レベルにある簡易FEMモデルによる船体固有振動数推定は2、3節に関してはまずまずの結果が得られたが、4節以降は縮小ポイント数やモデル化条件に問題が残った。 コンテナ船1隻についてであるが、上部構造の推定はまずまずの結果が得られ、基部条件等のほかの船種に対する適用度を明確にすれば実用化に十分耐えうる手法であることが分かった。 なお、解析手法の検証のため、2隻の詳細計測以外に簡略的統一計測法により、本年度12隻のバルカー、タンカー、コンテナ船の種々の節振動、居住区振動等の固有振動数などのデータを得て統一データ分析・表示方法により取りまとめ、一部簡易式の検証に参照できた。今後この基礎となるデータベースを利用して防振設計のための支援ツールの内容を充実させるために有効に活用して行くことができる。 一方、設計支援ツールの中のデータベース構成として、「振動文献」、「トラブルデータ」、「計測データ」の3つを考慮し、これらはMS−EXCELのデータファイルとして収録した。また、これらデータを利用して「振動データが閲覧できる」、「様々なレベルで振動推定法が支援できる」、「振動基準がチェックできる」等の支援ツールを構築中で、大略の情報とリンクできた。今後は各必要要素を充実させ、有益な情報ネット支援システムを構築する。
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