■事業の内容
近年、国民の余暇時間の増加等により水上レジャーが身近になり、小型モーターボートが急速に普及するにつれて要求事項も多様化し、乗り心地や環境問題等の観点から、騒音の低減化を求める声が強くなってきている。今後の小型モーターボートのさらなる普及、発展のためには騒音改善が重要かつ緊急の課題である。 ところが、特に小型高速艇においては、これまでスピード性能や燃費、品質などの改良が技術開発の中心にあり、自動車産業等に比べると騒音低減についての研究が必ずしも十分に行われてきたとは言えないのが現状である。 本事業は、平成9年度に引き続き小型高速艇用船外機及びその艇体から発生する音の低減化を目指した研究開発を行い、我が国造船技術の向上並びに海事産業の発展に寄与するため、実施した。 (1) 実施内容 [1] 第1次試作品の製作 平成9年度「小型高速艇の減音化に関する研究開発」における設計に基づいて、第1次試作品を製作した。諸元は次のとおりである。 種類 : 水冷2サイクルガソリン機関 型式 : 縦型直列3気筒 内径×行程 : 59mm×58mm 総排気量 : 475cc 圧縮比 : 8.9 最大出力 : 37ps/6200rpm 最大トルク : 4.6kgf/5000rpm 機関寸法 : 575×320×1050mm 総重量 : 53kgf 吸気方式 : リードバルブ 始動方式 : リコイルスタート 点火方式 : フライホイール・トランジスタマグネトー 点火プラグ : NGK B8EGV 気化器形式、個数 : ミクニ B30TI、3 ギア比 : 14:15 プロペラ(直径×ピッチ): 185mm×243mm トランサム高さ : 321mm [2] 第1次試作品の台上出力試験 台上出力を計測し、平成9年度に製作した予備試作品と出力性能を比較した。 [3] 第1次試作品の航走試験 第1次試作品を現用の小型高速艇に搭載して全速速力を計測し、平成9年度に製作した予備試作品と速力性能を比較した。 [4] 第1次試作品の台上音源解析試験 台上運転中の第1次試作品側面の音源探査を実施して音響パワーを算出し、平成9年度予備試作品と減音効果を比較した。 [5] 第1次試作品の通過騒音解析試験 第1次試作品を搭載した小型高速艇が航走する位置から所定の測定距離をおいた地点での通過騒音を計測し、これを解析して平成9年度予備試作品と減音効果を比較した。 [6] 第1次試作品の振動解析試験 第1次試作品搭載艇の船体の振動を計測して解析し、平成9年度予備試作品と比較した。 [7] 第2次試作品の設計 第1次試作品の解析試験結果をもとに、さらなる減音化のため、排気音の低減を重視した第2次試作部品を設計した。
■事業の成果
(1) 第1次試作品の台上出力試験 台上出力を計測し、平成9年度に製作した予備試作品と比較した結果、3%上回る出力が得られた。 (2) 第1次試作品の航走試験 全速速力を計測し、平成9年度に製作した予備試作品と比較した結果、0.5km/h上回る速力が得られた。 (3) 第1次試作品の台上音源解析試験 台上運転中の第1次試作品側面の音源探査を実施し、この面の音響パワーを算出した。平成9年度に製作した予備試作品と比較した結果、測定面の音響パワーで4.4dB減音化することができた。また、音源探査結果から、今後、モーターに対して主たる減音対策を実施すべき箇所はキャリアボデーであることが判明した。 (4) 第1次試作品の通過騒音解析試験 第1次試作品を搭載した小型高速艇が航走する位置から所定の測定距離をおいた地点での通過騒音を計測し解析して平成9年度予備試作品と減音効果を比較した結果、1.5dB減音化することができた。 (5) 第1次試作品の振動解析試験 第1次試作品搭載艇の船体の振動を計測して解析し、平成9年度予備試作品と比較した結果、トランサム部分では、全帯域周波数の実効値で23%、低周波数帯域の実効値で19%低減することができた。また、デッキ部分では、低周波数帯域の実効値で7%低減することができた。 (6) 第2次試作品の設計 排気音の低減を重視した第2次試作部品を設計した。
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