■事業の内容
これからのわが国の社会における急激な高齢社会並びに障害のある方々の自立と社会参加の進展に伴い、高齢者や障害のある方々の活動を支える社会システムの整備が重要かつ緊急な課題となっている。 本事業は高齢者・障害者等の移動制約者等が安全かつ円滑に利用できる公共交通機関の実現を目指し、わが国内外における高齢者・障害者の公共交通機関利用の円滑化に係る対策や整備状況等について、[1]欧米主要国における高齢者・障害者の移動支援システムに関する総合調査、[2]交通ボランティアネットワークビジョンの構築に関する調査を行い、さらに視覚障害者の安全に大きな力となる[3]ホームドアシステムの研究開発を行うことにより、人にやさしい交通施設の実現と高齢者・障害者の移動の円滑化に寄与することを目的とし実施した。 (1) 欧米主要国における高齢者・障害者の移動支援システムに関する総合調査 [1] 欧米主要国(フランス、ドイツ)並びにわが国(横浜市、金沢市、熊本市)における高齢者・障害者等の移動支援システム事例調査 a.ハードの整備状況 (a) EV・ES等の整備状況 (b) 旅客案内サイン等普及状況 (c) ノンステップバス、LRT等の普及状況 (d) 高齢者・障害者の施設整備状況、道路状況 b.ソフトの整備状況 (a) 施設整備への自治体の支援及び住民のコンセンサス (b) アメニティ推進の法制度 (c) 施設整備に係る補助・助成制度 (d) 福祉タクシー、STSサービス制度 (e) 交通ボランティア制度、市民意識、市民活動状況 (2) 交通ボランティアネットワークビジョンの構築に関する調査研究 [1] 交通ボランティアネットワークビジョン策定フロー a.実態調査 調査先:日本身体障害者団体連合会、全国老人クラブ連合会、調査地の札幌、仙台、東京、大阪、広島、高松、福岡地区においては地方公共団体、社会福祉協議会、ボランティアセンター、交通事業者(公営・JR・民鉄・バス会社・航空会社・タクシー会社)、ボランティア団体、障害者団体、老人クラブ b.調査内容 (a) 交通ボランティアの現状とニーズ調査 (b) 交通事業者の介助業務の実態、問題点の把握 (c) 民間ボランティア団体の活動状況の把握 (d) 地方公共団体の交通ボランティアに関する考え方の把握 (e) 交通事業者、地方公共団体、民間ボランティアとのネットワーク調査 (f) 高齢者、障害者のアンケート調査 イ.高齢者・障害者1000サンプル ロ.全国移送サービス団体450サンプル [2] ビジョンを策定するための検討 a.交通ボランティア事業定着方策の検討 b.連携ネットワークの可能性の検討 c.情報提供のあり方の検討 d.知識や技術を研修する場の検討 (3) ホーム・ドア・システムの研究開発 [1] 研究開発の内容 a.研究開発計画の検討 b.検討課題の方針 c.標準型可動柵の開発 (a) ホームドア主要素部の設計・製作 (b) ホームドア主要素部の試験・評価 d.ホームドアシステム試作機の検討 e.要求仕様・設置条件の課題について
■事業の成果
わが国においては、2015年に65歳以上の高齢者が全人口の4分の1を占めるという高齢社会への到来並びに障害のある方々の社会参加に伴い、これからの交通は高齢者や障害者等の移動制約者のモビリティ確保が緊要とされている。
本事業では、特に視覚障害者のホーム転落事故は解消されておらず、死亡事故も後を絶たないことから、既設の駅でも設置しやすく、経済的で安全性の高いホームドアシステムの研究開発を行い、障害者の社会参加を容易にし、また、欧米諸国の交通バリアフリー施設、高齢者・障害者等の移動制約者の移動をサポートする交通ボランティア等諸制度の海外事例調査を、さらに交通ボランティアのネットワークビジョンの構築化のための調査を実施し、わが国移動制約者の安全で円滑な交通機関利用促進のための諸方策を策定した。
この結果、ホームドアシステムは概略要素部分が完成し、既設駅へのホームドア設置が可能なことが明らかになった。次に海外事例調査、交通ボランティアネットワークの実態把握をしたことにより、これからのわが国の高齢者・障害者を含む移動制約者の円滑なモビリティ確保の方策を確信することができた。
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