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■事業の内容

21世紀は、経済・文化・社会等国民生活を取り巻く状況が諸外国との交流を通じて展開していくことが予想されることから、平成8年12月の「第7次空港整備五箇年計画」において、我が国空港整備の最大の課題は、国際ハブ空港を始めとした大都市圏の拠点空港の整備の推進であるとされている。
 一方、利用者の立場からは、空港における搭乗手続きや出国手続き窓口での混雑を回避するとともに、出発地から飛行機搭乗に至るまでの所要時間の短縮や手荷物を持って移動する距離の短縮等の快適性の向上が求められている。この利用者ニーズに応え、新しい国際空港の機能を高めるためには、既存施設である新東京国際空港における東京シティー・エア・ターミナル(箱崎)、関西国際空港における大阪シティー・エア・ターミナル(難波)、神戸シティー・エア・ターミナル(神戸)等のケースを踏まえつつ、今後とも需要の多い各地において、利便性の高いシティー・エア・ターミナルを整備して行くことが重要な課題となっている。
 本事業は、このような状況を踏まえ、21世紀初頭の開港を目指して進められている中部新国際空港をモデルケースとして、今後の新国際空港整備に関連するシティー・エア・ターミナルの整備のあり方について検討を行った。
(1) 実施方法
 委員会審議
 (財)運輸政策研究機構内に委員会及び検討会を設置し、調査方法の決定、調査内容の検討を行い、現地調査、ヒアリング調査を実施し、作業の一部を専門機関に委託した。
(2) 調査項目
 [1] CATから空港アクセス、CATまでのアクセス、後背地人口とCAT利用可能性、用地確保と用地費、等の要素について整理する。
 [2] 空港までの乗換を含む所要時間、搭乗までの手続き、審査の円滑化、等の要素について整理する。
 [3] CATの必要性、CATの候補地、利用者数の予測、収支採算性の検討
(3) 実態調査
 現地打合せ(於:中部運輸局)
  5月19日  調査項目、委員会メンバー、コンサル選定、調査スケジュール等
         及び第1回検討会事前協議  1人
 12月 4日  第2回検討会事前協議    1人
 12月15日  第2回検討会事前協議    1人
(4) 報告書作成
 [1] 部 数  250部
 [2] 配布先  関係官公庁、関係諸団体、大学、ヒアリング先、その他
■事業の成果

平成8年12月の「第7次空港整備五箇年計画」において、航空による国際交流の増大と国内航空ネットワークの充実に対する国民の緊急の要請にこたえるため、航空ネットワーク形成の拠点となる大都市圏における拠点空港の整備を最優先課題として推進することが定められた。
 本調査はこれを受けて、平成9〜10年度の2カ年にわたり、大都市圏における新しい国際空港の機能を高めるために必要な、利便性の高いシティ・エア・ターミナルのあり方について調査するとともに、新たに事業推進が盛り込まれた中部国際空港をケーススタディとして取り上げ、シティ・エア・ターミナルの設置可能性について検討したものである。
 本調査により、国内に6カ所ある既存シティ・エア・ターミナルに関して、それぞれの設置目的、整備手法、運営手法、導入機能、利用状況、経営状況等を把握した。各施設とも概して利用者数が伸び悩んでいる状況であり、経営状況は設立当初の予想に反して良好であるとは言い難い状況であることが判った。この原因には、高速道路の整備や鉄道アクセスの充実、都市内各地からの直通リムジンバスの運行などをはじめとする、空港アクセス手段の多様化、団体旅客の空港集合や空港宅配便の普及などの要因が関係しており、定時性、速達性、廉価性、快適性などの点でシティ・エア・ターミナル利用が不利になっていることによるものである。
 また、今後の整備の方向性としては、従来の機能に加えて、情報提供機能、都市的機能、交通結節拠点機能など、各種機能の高度化について、採算性を確保することも考慮しながら検討すべきことが明らかになった。
 さらに、中部国際空港におけるケーススタディでは、多額の投資が必要なCAT整備よりも、むしろCATの整備の有無にとらわれることなく、情報提供、予約・発券機能など、空港利用者の利便性向上に資すると考えられるサービスの提供をアクセス計画や空港計画等の具体化にあわせて総合的に検討する方が、より有効であるという結論となった。
 本調査結果は、今後の航空旅客へのアクセスサービスのあり方を考える上での資料として、有効な活用が期待されるものである。





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