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■事業の内容

我が国の65才以上の高齢者人口は、総人口の約15%を占めており、既に高齢化社会に突入するに至っている。
 今後急速な高齢化の進展により、2020年には65才以上の高齢者が人口の4分の1以上になることが予想されている。高齢者の増加のほか、障害者については、自立と社会参加の要請が高まっている。このような背景から、高齢者、障害者等の移動制約者の交通手段を確保することが、大きな課題となっている。
 移動制約者の交通手段としては、自宅から交通機関や各種施設までの移動について、利用者にとって適切かつ便利なスペシャルトランスポートサービス(STS:移動制約者を対象としたバリアフリー車両を使用した交通サービス。主に、前日までの予約受付によるドア・ツー・ドア型と高齢者向け定時定路線型の2つのタイプの福祉輸送サービスがある)の導入が望まれており、既に一部で実現している地域もある。
 しかしながら、このようなサービスについては、利用者及び交通事業者の双方とも十分な経験とノウハウを有していない等、現段階では採算性の確保、適切なサービスの提供等に大きな不安があり、事業として未だ軌道にのってない状況にある。
 このような状況を踏まえ、本調査ではSTSの導入・運行に関する問題点を探り、サービス充実方策等について検討し、事業化のための処方箋を示し、今後、速やかにSTSの普及が図られるよう環境整備のあり方について検討を行い、本事業を実施した。
(1) 実施方法
 (財) 運輸政策研究機構内に委員会を設置し、調査方法の決定、調査内容の検討を行い、モデル運行を実施し、作業の一部を専門機関に委託した。
(2) 調査項目
 [1] モデル運行の詳細計画策定
 [2] モデル運行の実施
 [3] モデル運行地区の利用者等に対するアンケート調査の実施
 [4] モデル運行の結果に基づくSTS導入方策、採算性の確保方策等の検討
(3) 実態調査
 [1] 現地調査
  ・7月30日〜31日 北海道札幌市、栗山町
   北海道運輸局、札幌陸運支局、栗山町とモデル運行ルートの確認及び実施計画の詳細についての打合せ
  ・9月5日 三鷹市
   三鷹市における定時定路線及びドア・ツー・ドアのモデル運行開始日の利用状況を把握した。
  ・9月10日 三鷹市
   三鷹市における定時定路線及びドア・ツー・ドアのモデル運行の利用状況を把握した。
  ・9月25日 三鷹市
   三鷹市における定時定路線のモデル運行の最終日の利用状況を把握した。
  ・9月30日〜10月1日 北海道栗山町
   栗山町において定時定路線モデル運行(運行期間 10月1日〜21日)の状況把握を行った。
 [2] ヒアリング調査
  ・10月29日 (株)丸幸ハイヤー 1人
   栗山町における定時定路線実施団体である(株)丸幸ハイヤーにモデル運行の成果と今後の課題についてヒアリングを行った。
  ・11月20日 みたかハンディキャブ運営委員会 1人
   三鷹市におけるドア・ツー・ドア実施団体であるみたかハンディキャブ運営委員会にモデル運行の成果と今後の課題についてヒアリングを行った。
  ・11月20日 武州交通興業(株) 1人
   三鷹市におけるドア・ツー・ドア実施団体であるモデル運行の成果と今後の課題についてヒアリングを行った。
(4) 報告書作成
 [1] 部 数  250部
 [2] 配布先  関係官公庁、関係諸団体、大学ヒアリング先等
■事業の成果

本調査研究では、ドア・ツー・ドア型と定時定路線型のモデル実験運行を実施し、地域住民ならびに利用者へのアンケート調査、また、運行にあたった交通事業者やボランティア団体へのヒアリング調査等を行った結果から、利用者のニーズや運行する上での問題点など今後のSTS普及を図るための環境整備への貴重なデータを得ることができた。

 以上の結果を踏まえて、STS導入推進方策の課題整理を行い、今後のSTS導入推進方策の提示を行った。

 本調査の結果は、わが国の多くの自治体が、STSを本格導入する際の参考になる上、バス、タクシー事業者にとっては、新しい市場を示唆し、運輸省にとっては、現行の福祉輸送の実態を見直し、現行法の枠組みの中で対応するか、新しい枠組みにしてSTSの導入・普及を図るか、そのための政策立案に有効な資料として活用が期待されるものである。





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