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■事業の内容

国連危険物輸送専門家委員会(以下「国連委員会」という。)は、危険物輸送に係る基本的要件(危険物の定義・分類、容器基準、評価試験方法及び判定基準等)について検討を行っている。国連委員会で決定された基準等は国連勧告としてまとめられ、これが海上運送をはじめとした各輸送モードの国際運送基準(海上運送においてはIMO/IMDGコード)に取り入れられている。このような背景から、国連委員会に対処するための危険物輸送国連対応委員会(国連対応委員会)を開催して我が国意見を集約すると共に、国連委員会への専門委員の派遣により必要な情報を収集し、国連委員会において我が国意見の反映を図ることを目的として本事業を実施した。
 本年度事業の概要としては、国連危険物輸送専門家委員会(国連委員会)第15回小委員会及び第20回委員会における検討課題全般について、国連対応委員会、同第一部会並びに同第二部会及び関係作業部会を開催して検討した。国連委員会の議題中「反応性物質の危険性評価試験としての圧力容器試験の策定」については、平成7年第10回小委員会で採択された我が国提案(新圧力容器試験の開発)がオランダとの共同研究の形で次期2年間の作業計画で包括項目として承認された。
 また、本年度は、我が国提案の圧力容器試験を国連試験として採り入れるために、関係国によるラウンドロビンテストの実施が予定されているので、わが国においてもその実施に向けて準備することとなった。
(1) 委員会の開催 (国内)
 [1] 危険物輸送国連対応委員会
   委員構成:学識経験者9名、関連業界実務者6名及び官庁関係者10名(合計25名)
 [2] 危険物輸送国連対応委員会第一部会圧力容器試験部会
   委員構成:学識経験者2名、関連業界実務者7名及び官庁関係者6名(合計15名)
 [3] 危険物輸送国連対応委員会第二部会
   委員構成:学識経験者1名、関連業界実務者17名及び官庁関係者8名(合計26名)
(2) 国連委員会への対処 (海外)
国連小委員会第15回会合及び第20回委員会には、国連対応委員会の検討結果である対処案に基づき各種案件について我が国の意向を表明するとともに危険物輸送に関する国際的動向の調査及び各国代表等との意見交換を行った。
 なお、前回小委員会で継続審議とされていた有機過酸化物に関するわが国提案については、第15回小委員会で一部修正の上採択され、第20回委員会で承認された。
 [1] 出席会議名
   国連危険物輸送専門家委員会第15回小委員会及び第20回委員会
 [2] 派遣場所
   ジュネーブ国連欧州本部
 [3] 派遣期間
   第15回 小委員会:平成10年 6月25日〜 7月14日
   第20回 委員会 :平成10年12月 4日〜12月23日
 [4] 派遣員
   国連危険物輸送専門家委員会委員 八十川 欣勇氏((社)日本海事検定協会)
 [5] 審議内容
   「危険物輸送に関する国連勧告」及びこれに基づく「試験及び判定基準マニュアル」の改正に関する事項及び国連環境開発会議(UNCED)決議に基づく「化学品の分類及び標札の世界的調和システム」に関する事項
(3) 報告書の作成
 [1] 部 数  40部
 [2] 規 格  A4版 75頁
 [3] 配布先  関係官庁及び委員等
■事業の成果

国連危険物輸送専門家委員会は、日本をはじめとする21の委員国、IMO(国際海事機関)、ICAO(国際民間航空機機関)、IAEA(国際原子力機関)等国連専門機関、非政府国際機関等が参加し、各運送モードに共通な危険物輸送に関する国際基準を策定している。従って、この国連専門家委員会に直接わが国の意見を反映することは、わが国の危険物海上運送に係わる主管庁及び関係業界にとって極めて重要なことと認識されている。本事業は、国連専門家委員会における検討課題の討議や日本提案の策定を目的として危険物輸送国連対応委員会を設置しこれに対応している。本年度の2回にわたる国連専門家委員会の各種検討課題に対応するとともに平成7年のわが国提案「反応性物質の危険性評価試験としての圧力容器試験の策定」の継続検討が採択され、その後オランダと共同提案の形となり、来年度に最終的な新国連圧力容器試験法を策定提案するべく検討中である。

 国連勧告改正に関する分野における本年度の成果としては、わが国において地方運輸局長許可の基に輸送を行っている新規有機過酸化物の化学名リストへの追加に関するわが国提案及びリチュウム電池関連規定の見直しについての今後の作業計画案が採決された。

 これらに加えて、危険物輸送に関する国際舞台における動向を調査し危険物の海上輸送関係官庁及び関係業界に貴重な情報を提供することができた。

 これら本事業の国際的活動は、結果として我が国の危険物海上安全運送基準の策定にも貢献したものと確信している。





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