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1998年(平成10年)

平成9年那審第51号
    件名
プレジャーボート瀬田丸遭難事件

    事件区分
遭難事件
    言渡年月日
平成10年4月16日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

東晴二、井上卓、長浜義昭
    理事官
供田仁男

    受審人
A 職名:瀬田丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
キャビン外壁損傷、機関などに濡れ損、のち廃船

    原因
操船・操機(推進器周りの確認)取扱不適切

    主文
本件遭難は、走錨時の機関使用の際、推進器周りの確認が不十分で、錨索が推進器に絡み、航行不能となったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時時刻及び場所
平成9年8月3日05時30分
奄美列島請島東部南端付近
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート瀬田丸
登録長 6.28メートル
全長 6.99メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 57キロワット
3 事実の経過
瀬田丸は、FRP製プレジャーボートで、釣りをするため、A受審人が乗り組み、友人1人を乗せ、船首、船尾共に0.3メートルの喫水をもって、平成9年8月2日18時30分鹿児島県奄美大島古仁屋港を発し、19時10分奄美列島請島東部南端付近のジャナレ島の頂(72メートル)から070度(真方位、以下同じ。)650メートルの地点に至り、請島東部南端海岸から沖合に広がったさんご礁の外縁からの距離200メートル、水深20メートル、底質岩の同地点で、重さ4キログラムの四爪(よつめ)錨を船首から投じ、直径13ミリメートルの合成繊維製錨索を30メートル延ばして船首クリートに係止し、錨泊した。
その後A受審人は、友人と共に釣りをしながら過ごし、翌3日05時25分釣りをやめ、帰り支度をしていたところ、同時30分少し前船首が275度を向いているとき、さんご礁外縁で隆起する白波の最も近いところまで右舷船首方30メートルとなっていることに初めて気付き、陸影の様子などからも船が投錨位置から海岸側に大幅に移動しており、走錨していることを知った。
A受審人は、錨を揚げる前にとりあえずさんご礁外縁から遠ざかることとし、機関を使用することとしたが、このとき錨索を船首から出しているので、船尾の推進器周りにはないと思い、またなるべく早くという気持ちもあって、錨索をたたぐってみるなどの推進器周りの確認を十分に行わず、まず後退しようと、機関始動に引き続いて微速力後進にかけたところ、05時30分ジャナレ島頂から057度520メートルの地点において、瀬田丸は、船首が275度を向き、さんご礁外縁線に対してほぼ45度の角度をなしているとき、錨索が推進器に巻き込まれて絡み、機関が停止し、航行不能となった。
当時、天候は晴で風力1の南南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、日出は05時45分であった。
その後A受審人は、機関を始動して種々使用したが、絡みが取れる様子を認めず、友人が予備錨を投じても、次第にさんご礁水域に圧流される状況のところ、海中に入って絡んだ錨索の錨側を刃物で切り、絡んだ部分を推進器から取り除こうと試みたが、さんご礁外縁が極近くなったことから危険を感じ、作業を中止して船に上がり、その直後船体は、波を左舷から受けて転覆し、やがてさんご礁水域に流されるうち、復原し、また転覆し、浅所に乗り揚げた。
その結果、瀬田丸は、キャビン外壁を損傷し、機関などに濡れ損を生じ、のち廃船とされた。A受審人と友人は、陸上に逃れ、無事であった。

(原因)
本件遭難は、日出前の薄明時、鹿児島県奄美列島請島東部南端のさんご礁外縁付近において錨泊中、走錨状態にあることが判明し、機関を使用する際、推進器周りの確認が不十分で、機関を微速力後進にかけたとき、錨索が推進器に巻き込まれて絡み、航行不能となったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、日出前の薄明時、鹿児島県奄美列島請島東部南端のさんご礁外縁付近において錨泊中、走錨していることを知り、機関を使用する場合、錨索をたぐるなどして推進器周りを十分に確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、錨索を船首から出しているので、船尾の推進器周りには錨索はないと思い、またなるべく早くという気持もあって、推進器周りを十分に確認しなかった職務上の過失により、機関を微速力後進にかけたとき、錨索を推進器に絡ませ、航行不能を招き、さんご礁水域に圧流されてキャビンに損傷を、機関などに濡れ損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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