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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成7年11月14日01時30分 佐賀県臼島北岸付近 2 船舶の要目 船種船名
油送船明悦丸 総トン数 498トン 全長 66.74メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 735キロワット 3 事実の経過 明悦丸は、船尾船橋型の鋼製油送船で、A受審人ほか5人が乗り組み、A重油1,100キロリットルを積載し、船首3.20メートル船尾4.30メートルの喫水をもって、平成7年11月13日13時10分大分港を発し、関門海峡経由で熊本県八代港に向かった。 これより先、明悦丸は、同月12日15時05分大分港住吉埠(ふ)頭に着岸し、荷役がなかったので翌13日朝まで乗組員全員が休息して08時30分同埠頭を離岸し、10時00分九州石油株式会社大分製油所の専用岸壁に着岸して10時30分から12時45分まで積荷役を乗組員全員で行ったのち、前示のとおり出航したもので、同船では、船橋当直を船長、一等航海士及び甲板長による単独4時間交替の3直制で行っており、乗組員は航海中に十分な休息をとることができる状況であった。 21時50分A受審人は、倉良瀬灯台北東方1.7海里ばかりの地点で、前直の甲板長から船橋当直を引き継いで九州北岸沿いを西行し、翌14日00時23分灯台瀬灯標から180度(真方位、以下同じ。)0.8海里の地点において、針路を244度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、11.0ノットの速力で進行し、01時00分呼子平瀬灯台から081度4.6海里の地点に達したとき、針路をほぼ臼島に向首する252度に転じて続航した。 その後、A受審人は、呼子平瀬灯台に並航したら加唐島と加部島との間に向けて転針するつもりで、操舵輪後方のいすに腰掛けて当直に当たっているうち、海上が穏やかで視界も良く、周囲に他船を見かけなかったことから気が緩み、眠気を催すようになったが、まさか居眠りすることはあるまいと思い、コーヒーを飲んだり、いすから立ち上がって歩いたりするなどの居眠り運航の防止措置をとることなく、いすに腰掛けたまま当直を続けているうち、いつしか居眠りに陥った。 こうして明悦丸は、A受審人が居眠りに陥ったため、01時24分半ごろ転針予定地点に達したものの、転針の措置がとられないまま進行し、01時30分臼島灯台から020度100メートルの地点において、臼島北方の浅所に原針路、原速力のまま乗り揚げた。 当時、天候は曇で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期で、視界は良好であった。 乗揚の結果、船底外板全般にわたって破口を伴う凹損を生じたが、来援したサルベージ船により引き降ろされ、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、夜間、佐賀県呼子港北東方沖合を西行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同県臼島北方の浅所に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、単独の船橋当直に就き、佐賀県呼子港北東方沖合を西行中、海上が穏やかで、視界も良く、周囲に他船を見かけなかったことから、眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、コーヒーを飲んだり、いすから立ち上がって歩いたりするなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、臼島北方の浅所に向首進行して乗揚を招き、船底外板全般にわたって破口を伴う凹損を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |