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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年7月19日15時00分 沖縄県西表島船浦港東方沖合 2 船舶の要目 船種船名
旅客船サザンクロス5号 総トン数 19トン 全長 26.20メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 1,529キロワット 3 事実の経過 サザンクロス5号は、沖縄県石垣港を中心に同県八重山列島の名港間で定時運行されている軽合金製旅客船であり、A受審人ほか1人が乗り組み、旅客8人を乗せ、船首0.20メートル船尾1.25メートルの喫水をもって、平成9年7月19日14時30分石垣港を発し、西表島船浦港へ向かった。 A受審人は、自ら操舵操船に当たり、14時37分半わずか過ぎ琉球観音埼灯台から199度(真方位、以下同じ。)1.2海里の地点で、針路を288度に定め、機関を回転数毎分2,100の全速力前進にかけ、39.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。 ところで船浦港へ入航するには、同港東方の北岸に沿って拡延する浅礁とその沖合の浅礁とに挟まれた水路を航行することとなるが、同水路の要所には立標が設置されていた。 また、A受審人は、これまで船浦港へ数限りなく入港し、水路状況を十分承知しており、船浦港東口第2号立標(以下「第2号立標」という。)の南方至近に浅礁が延びていることも知っていたので、浅礁のその部分については、海水色の変化を見てその都度避けて航行するようにしていた。 14時59分少し過ぎ、A受審人は、第2号立標から036度900メートルの地点に達したとき、浅礁に挟まれた前示の水路へ向かうこととし、第2号立標を右舷船首に見る211度の針路に転じたところ、折からの太陽光線による海面反射で浅礁を示す海水色の変化を識別しにくくなったが、進行するうちに浅礁が分かるものと思い、第2号立標から十分に離す安全な針路とすることなく、浅礁に著しく接近する状況のまま進行した。 サザンクロス5号は、同じ針路、速力で続航中、第2号立標を右舷至近に航過した直後、15時00分第2号立標から180度30メートルの地点において、浅礁の東端に原速力のまま船尾船底を乗り揚げ、擦過した。 当時、天候は晴で風力3の南東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。 乗揚の結果、右舷プロペラに亀(き)裂を伴う曲損を、右舷プロペラ軸及び舵頭材に曲損をそれぞれ生じ、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、沖縄県石垣港から同県西表島船浦港へ向け航行中、同港東方沖合において、太陽光線による海面反射で浅礁を識別しにくい状況の下、浅礁に挟まれた水路に向けて転針する際、針路の選定が不適切で、第2号立標南方至近まで延びた浅礁に著しく接近する状況のまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、船浦港東方沖合において、第2号立標を右舷船首方に見る目標とし、浅礁に挟まれた水路に向けて針路を転じるにあたり、浅礁の存在を示す海水色の変化が太陽光線による海面反射で識別しにくい状況であった場合、第2号立標南方至近まで浅礁が延びていたのであるから、同立標を十分に離す安全な針路とすべき注意義務があった。しかるに、同人は、進行するうち浅礁が分かるものと思い、安全な針路としなかった職務上の過失により、浅礁に著しく接近して乗揚を招き、右舷プロペラに亀裂を伴う曲損を、舵頭材及び右舷プロペラ軸に曲損をそれぞれ生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |