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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年3月3日03時40分 鳴門海峡 2 船舶の要目 船種船名
貨物船第十八旭丸 総トン数 495.99トン 全長 60.02メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 956キロワット 3 事実の経過 第十八旭丸(以下「旭丸」という。)は、船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか3人が乗り組み、スクラップ約1,087トンを載せ、船首3.20メートル船尾4.40メートルの喫水をもって、平成9年3月1日17時30分京浜港東京区を発し、岡山県水島港に向かった。 A受審人は、船橋当直を一等航海士と交互に約6時間の単独制を採り、翌2日19時15分ごろ潮岬の東方沖合で昇橋し、鳴門海峡通過までの予定で当直に当たり、3日00時44分紀伊日ノ御埼灯台から230度(真方位、以下同じ。)2.2海里の地点に達したとき、針路を鳴門飛島灯台(以下「飛島灯台」という。)に向く320度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で進行した。 03時35分A受審人は、飛島灯台から140度1,650メートルの地点で、鳴門海峡最狭部の通過に備えて手動操舵に切り替え、同時36分同灯台から140度1,330メートルの地点に達したとき、大鳴門橋を通過したばかりの南下船を認め、同時37分大鳴門橋に向けて右転する予定転針地点に当たる、同灯台から140度1,030メートルの地点に至ったが、南下船の接近が気になり、同船を右舷対右舷で替わしたのちに大鳴門橋の中央に向けて右転することとし、同一針路のまま続航した。 A受審人は、03時39分飛島灯台から140度390メートルの地点に達したとき、南下船と十分に距離を離すようになったので互いに右舷を対して航過するよう、大鳴門橋に向けて右舵をとって右転を開始し、船首が大鳴門橋橋梁灯の中央灯に向いたころ、船首方400メートルのところに自船に向けて突然照射された漁船の灯火を認め、これを避けるためにとっさに左転して避航しても大丈夫と思い、左舷方近くの飛島に乗り揚げることのないよう、右転して避航することなく、右転を止めて左舵15度をとって左転を開始した。 A受審人は、なおも左転を続けて飛島に向かって進行し、旭丸は、03時40分飛島灯台から155度80メートルの飛島南東方の浅所に、船首が314度に向いたとき、原速力のまま乗り揚げた。 当時、天候は晴で風力2の西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。 乗揚の結果、船底に破口を生じたが、来援した引船によって引き降ろされ、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、夜間、鳴門海峡を北上中、前方に漁船の灯火を認めて避航する際、転舵措置が不適切で、左転して飛島に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、鳴門海峡において、南下船と互いに右舷を対して航過したのち、大鳴門橋の中央に向けて右転を開始して北上中、前方に自船に向けて灯火を照射する漁船を認めた場合、左舷方近くの飛島に乗り揚げることのないよう、右転して避航する転舵措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、とっさに左転しても大丈夫と思い、右転して避航する転舵措置をとらなかった職務上の過失により、飛島に向けて進行して同島南東方の浅所への乗揚を招き、船底に破口を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
よって主文のとおり裁決する。 |