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1998年(平成10年)

平成9年広審第109号
    件名
漁船第2浦郷丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年11月27日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

黒岩貢、杉崎忠志、横須賀勇一
    理事官
川本豊

    受審人
A 職名:第2浦郷丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底外板に破口を生じで浸水、補機等に濡れ損

    原因
針路選定不適切

    主文
本件乗揚は、針路の選定が不適切であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年12月5日02時00分
隠岐諸島西ノ島赤灘鼻
2 船舶の要目
船種船名 漁船第2浦郷丸
総トン数 19.33トン
全長 19.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 130
3 事実の経過
第2浦郷丸(以下「浦郷丸」という。)は、中型旋網漁業付属船(うらこぎ)として漁労に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首0.3メートル船尾2.4メートルの喫水をもって、平成8年12月4日16時30分旋網船団の僚船とともに島根県浦郷港を発し、隠岐諸島知夫里島の立ヶ埼南西方10海里ばかりの沖合の漁場に向かった。
A受審人は、23時00分ごろ漁場に到着し、2時間ばかり操業したが、天候が悪化したため帰途に就くこととし、翌5日01時00分赤灘鼻灯台から210度(真方位、以下同じ。)11.5海里の地点で、針路を同灯台の灯光に向首する030度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.5ノットの対地速力で手動操舵として進行し、同時30分ごろから操舵を甲板員に行わせ、自らはレーダー及びGPSプロッタを見ながら操船の指揮に当たった。
ところで浦郷丸のプロッタは、レーダー映像の表示はできなかったものの、ロムカードを差し込むことによって、自船の船位のほか、その地域の海岸線等をプロッタ画面上に表示し、その上に針路を設定することができたことから、A受審人は、主にプロッタを使用しながら航行を続けていたが、その海岸線等は船舶の航海用に利用できるほど正確なものではなく、障害物や陸岸に接近したら、目視またはレーダー等により安全な針路を選定する必要があった。
01時57分少し過ぎA受審人は、赤灘鼻灯台から210度1,000メートルの地点に達したとき、浦郷湾に入る針路に転じることとしたが、レーダーを監視するなどして赤灘鼻を十分に離す安全な針路を選定せず、プロッタ画面の海岸線が正確なものと思い、そこに表示された同鼻南端の海岸線を50メートル離す036度の針路に転じて続航中、02時00分浦郷丸は、赤灘鼻灯台から180度130メートルの赤灘鼻南端に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力6の南西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船底外板に破口を生じで浸水し、補機等に濡れ損を生じたが、自力離礁して帰港し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、隠岐諸島西ノ島赤灘鼻南方沖合を航行中、針路の選定が不適切で、赤灘鼻に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、操船の指揮に当たって赤灘鼻南方沖合を航行する場合、レーダーを監視するなどして同鼻を十分に離す安全な針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、プロッタに表示された海岸線が正確なものと思い、同画面だけを見て転針し、レーダーを監視するなどして同鼻を十分に離す安全な針路を選定しなかった職務上の過失により、赤灘鼻に向首したまま進行して乗揚を招き、浦郷丸の船底外板に破口を生じさせで浸水を招き、補機に濡れ損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

ようて主文のとおり裁決する。






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