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1998年(平成10年)

平成9年門審第82号
    件名
漁船第十七恵比須丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年10月8日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

伊藤實、西山烝一、岩渕三穂
    理事官
根岸秀幸

    受審人
A 職名:第十七恵比須丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底外板に破口を生じで浸水、のち廃船処分

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年2月16日05時20分
山口県特牛港入口付近
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十七恵比須丸
総トン数 18トン
全長 21.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 180
3 事実の経過
第十七恵比須丸(以下「恵比須丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事する、2基2軸を備えた軽合金製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、平成9年2月15日16時00分山口県豊浦郡豊北町特牛(こっとい)港を出港し、角島北西方20海里沖合の漁場に至って操業を行い、船内の貯蔵分と合わせて合計600ケースのいかを載せ、水揚げの目的で、船首1.2メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、翌16日03時00分同漁場を発して特牛港に向かった。
ところで、特牛港の入口付近には水上岩及び暗岩の諸険礁が散在し、このため特牛灯台は、安全な水路の範囲を示す白色光及びそれを挟んで危険な険礁の範囲を示す南北2つの赤色分弧とに区別した灯光を照射しており、その灯質及び明弧の範囲は海図及び灯台表に記載されていた。また、同灯台の西方沖合約1,100メートルには左舷標識の要岩灯浮標が設置され、同港に入出航する船舶は、同灯台及び同灯浮標を主要な目標として利用し、特に夜間入航の際は、同灯浮標を左舷近くに航過し、安全な水路を示す白色光の範囲内を航行して特牛港の防波堤入口に向かう進路をとっていた。
A受審人は、昼間に特牛港に入出航した経験が多数あったものの、同港入口付近にある平瀬の西方約100メートルに暗岩が存在することや特牛灯台の灯質及びその白色光の範囲が安全な水路を示すことなどを知らなかったが、同港にいつでも安全に入出航できるよう、あらかじめ同港付近の海図等を備えるとともに同海図等にあたるなどして同港付近の水路調査を十分に行うことなく、これまで他の入出航船の針路模様などを見て、平瀬を確認してからそれを右舷方に見て同港に入航する方法をとっていた。
A受審人は、漁場発進時から1人で操舵と見張りにあたり、角島通瀬埼の南方約1.3海里の地点に向けて航行し、05時02分南側の赤色分弧の範囲にある、特牛灯台から272度(真方位、以下同じ。)2.2海里の地点に達したとき、夜間に初めて特牛港に入航することとしたが、昼間と同じように平瀬を目視で確認してから入航すれば大丈夫と思い、針路を要岩灯浮標に向く088度に定め、機関を半速力前進にかけ、船尾からのうねりを受けて、8.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
A受審人は、05時09分ごろ特牛灯台の白色光の範囲に入り、甲板員を船首の見張りに就け、操舵室上部のサーチライトで前方を照射して続航し、同時14分同灯台から283度0.6海里の地点で、要岩灯浮標を船首至近に認めたとき、平瀬を見付けてから同瀬を右舷方に見てその北側を回り込んで特牛港に入航するつもりで、針路をGPSプロッター上に表示されている平瀬の方に向く114度に転じ、機関を4.0ノットの微速力前進に減速して進行した。
こうして、A受審人は、05時17分半特牛灯台の南側の赤色分弧の範囲に進入したが、水路調査が不十分で、同灯台の白色光の範囲及び平瀬西方の暗岩について知らなかったことから、安全な水路を示す白色光の範囲内を航行せず、また、同暗岩に接近していることにも気付かないまま、平瀬を目視しようと探しながら続航中、同時20分わずか前平瀬を視認し、近づき過ぎていることに危険を感じ、機関を全速力後進にかけたところ、恵比須丸は、05時20分特牛灯台から261度400メートルの平瀬西方の暗岩に、原針路、ほぼ原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力6の西北西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
乗揚の結果、船底外板に破口を生じて機関室に浸水し、風浪により平瀬に打ち揚げられ、のちサルベージ船により引き降ろされたが、全損となって廃船処分とされた。
また、A受審人と甲板員は出動した海上保安庁のヘリコプターによって救助された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、山口県特牛港に入航する際、水路調査が不十分で、安全な水路を示す白色光の範囲内を航行せず、平瀬西方の暗岩に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、港の入口に多数の険礁などが散在する山口県特牛港に入航する場合、これらの険礁などに接近することのないよう、あらかじめ同港付近の海図等を備えるとともに、同海図等にあたって暗岩の存在や特牛灯台の灯質及び安全な水路などについての水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、昼間の入出航の経験が多数あったので、夜間の入航も、昼間と同じように平瀬を目視で確認してから入航すれば大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同灯台の安全な水路を示す白色光の範囲内を航行せず、平瀬西方の暗岩に著しく接近してこれに乗り揚げ、船底外板に破口及び機関室に浸水を生じさせ、船体を全損させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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