|
(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年4月2日16時28分 水島港沖 2 船舶の要目 船種船名
貨物船リッチウエイ 総トン数 27,423.50トン 全長 192.80メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 9,635キロワット 3 事実の経過 リッチウエイ(以下「リ号」という。)は、遠洋区域を航行区域とする船尾船橋型貨物船で、船長Bほか33人が乗り組み、鉄鉱石43,883キロトンを積載し、船首11.46メートル船尾11.58メートの喫水をもって、平成9年3月21日フィリピン共和国ビラヌエバ港を発し、翌月2日07時30分ごろ兵庫県和田岬沖合でA受審人を乗船させた後水島港に向かった。 A受審人は、乗船時からリ号の水先業務に従事し、備讃瀬戸粟航路、水島航路を経由して水島港港外に至り、視程が1.5海里程度だったので、レーダーにより検疫錨地付近の他船の状況を把握した後、上濃地島西方700メートルばかりの地点で投錨する予定を立てて、同日16時18分六口島灯標から029度(真方位、以下同じ。)750メートルの地点で針路を290度に定め、機関を4.0ノットの極微速力前進にかけて手動操舵により進行した。 ところで、水島港港外の大型船用錨地は、北側を水島コンビナート、北東側を濃地諸島、西側を網代諸島、南側を六口島及び同島から西方に拡延する六ロ瀬並びに同瀬南西方のガンツガ瀬の各浅所により囲まれた東西約1.5海里、南北約0.9海里の水域で、前示両浅所の北端にはガンツガ瀬北方灯浮標が設置されていた。 16時20分半A受審人は、投錨に備えて機関を停止したところ、B船長から前示の予定錨地を更に西方の検疫錨地内に変更して欲しい旨の要請を受けたので、検疫錨地の南東側に存在した数隻の錨泊船の南側を迂回して検疫錨地に向かうつもりで、同時21分半機関を極微速力前進にかけ左舵一杯としたものの、低速力のため直ちに舵効を得ることができず大旋回径をもって左転を開始し、まもなく六口瀬の北方約550メートルの地点に錨泊する最南端の船舶を右舷側に替わす態勢となったので右舵一杯として同時26分半舵効を得るため8.3ノットの半速力前進として続航したが、このころ視程が更に狭まり右舷ウイングに出て、1.5海里ばかり離れ前示浅所に対する避険線の方位目標としていたガンツガ瀬北方灯浮標を探すことにのみ気を奪われ、レーダーなどにより船位を確認しなかったので、六口瀬に接近していることに気付かず、同時27分半増速したので6.9ノットの微速力前進に減じて右舵一杯のまま続航中、16時28分六口島灯標から271度1,100メートルの六口瀬で前示最南端の錨泊船との隔離距離を見て乗揚の危険を感じ、急遽左錨を投下するも時既に遅く、リ号は、235度を向首して乗り揚げた。 当時、天候は雨で風はほとんどなく、褥呈は約1海里、潮候は上げ潮の中央期で付近には微弱な潮流があった。 乗揚の結果、左舷船底外板に塗装剥離を生じ、来援した曳船2隻により引き降ろされた。
(原因) 本件乗揚は、水島港港外で錨泊する際、船位の確認が不十分で、六口瀬に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、視程約1海里の海象状況の下、水島港港外の検疫錨地に向け航行する場合、付近には水深10メートル以下の六口瀬が存在したから、同瀬に接近しているかどうか確かめることができるよう、レーダーを使用するなどして船位を確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、ウイングに出て避険線の方位目標としていた1海里以上離れたガンツガ瀬北方灯浮標を探すことにのみ気を奪われ、レーダーを使用するなどして船位を確認、しなかった職務上の過失により、六口瀬に向首進行して乗揚を招き、左舷船底外板に塗装剥離を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |