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1998年(平成10年)

平成10年那審第27号
    件名
貨物船海運丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年12月10日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

小金沢重充、東晴二、井上卓
    理事官
阿部能正

    受審人
A 職名:海運丸一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
左舷中央部船底外板に損傷

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年2月18日05時55分
沖縄県水納島南東側浅礁
2 船舶の要目
船種船名 貨物船海運丸
総トン数 498トン
全長 75.23メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット
3 事実の経過
海運丸は、全通二層甲板の船尾船橋型鋼製貨物船であり、船長B及びA受審人ほか3人が乗り組み、空倉のまま、船首1.88メートル船尾3.90メートルの喫水をもって、平成10年2月18日03時30分沖縄県那覇港を発し、同県運天港へ向かった。
A受審人は、発航の3日前に那覇港で雇入れされ沖縄島周辺を航行するのは今回が初めてであったところ、船首甲板における離岸作業を終了したのち、03時50分那覇港新港第1防波堤北灯台の西方0,3海里ばかりのところで、出港操船に当たっていたB船長と交替して単独で船橋当直に就き、04時50分残波岬灯台から290度(真方位、以下同じ。)2.0海里の地点に達したとき、針路を沖縄県水納島と同県瀬底島との間のほぼ中央に向かう037度に定め、機関を全速力前進にかけ、12.8ノットの対地速力で進行した。
ところで水納島は、南方から伊江水道へ向かう際の航過目標にしていた島で、その周囲にさんご礁が広がっており、海岸線から200ないし数百メートルまで拡延した浅礁の状況が海図第222号Bに記載されていた。また、本船のGPSプロッター画面には、伊江水道付近の島嶼(しょ)のほか船長により入力された目的地までの予定針路線が表示されていた。
05時36分半A受審人は、水納島灯台から202度4.1海里の地点は達したとき、伊江水道を北上することから、海図第222号Bを用意して水納島に接近することにしたが、GPSプロッター画面に表示されだ島嶼を避けて進行すればよいものと思い、海図により水路調査を十分に行わなかったので、水納島南東岸から沖合へ400メートルのところまで浅礁が拡延していることに気付かなかった。
05時46分わずか過ぎ、A受審人は、水納島灯台から186度2.1海里の地点で、伊江水道に向かう012度の針路に転じ、同じ速力で自動操舵により進行したところ、水納島南東岸から沖へ拡延した浅礁に著しく接近する状況となったが、GPSプロッター画面の表示を見ながら続航した。
B船長は、自室で休息中、05時55分少し前、船窓から見えた灯台が近いので不審に思って昇橋し、水納島に近づきすぎていることに気付き、直ちに手動躁舵に切り換えて右舵一杯としたが、間に合わず、05時55分水納島灯台から143度500メートルの地点において、海運丸は、原針路、原速力のまま浅礁に乗り揚げ、擦過した。
当時、天候は曇で風力4の北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、左舷中央部船底外板に損傷を生じた。

(原因)
本件乗揚は、夜間、沖縄県沖縄島西岸に沿って北上中、水納島に接近するにあたり、水路調査が不十分で、同島南東岸から沖へ拡延した浅礁に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、船橋当直に当たり、沖縄島西岸に沿って北上中、水納島に接近する場合、同島付近海域は初めて航行するのであるから、浅礁の拡延模様についで海図を見るなどの水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、GPSプロッター画面に表示された島嶼を避けて進行すればよいものと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、浅礁が水納島南東岸から沖へ拡延していることに気付かないまま、これに著しく接近して乗揚を招き、船底外板に損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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