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1998年(平成10年)

平成9年広審第110号
    件名
漁船第十八福昇丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年7月2日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

釜谷獎一、上野延之、横須賀勇一
    理事官
川本豊

    受審人
A 職名:第十八福昇丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部船底に破口、プロペラを曲損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年10月19日06時15分
島根県地蔵埼西方陸岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八福昇丸
総トン数 19トン
全長 23.08メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 253キロワット
3 事実の経過
第十八福昇丸は、(以下「福昇丸」という。)、鳥取県沖合を漁場とするいか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾1.9メートルの喫水をもって、平成8年10月16日15時00分堺港を発し、隠岐諸島島後白島埼北方沖合の漁場に向かった。
A受審人は、翌17日17時同漁場に至って操業を始め、隠岐諸島島前三度埼北西方10海里の漁場から、越えて19日02時00分操業を止めて帰途に就いた。
ところで、A受審人は、ほか2人が海技免状を受有していないので、漁場の往復及び漁場を移動する際の船橋当直を同受審人のみで行い、操業中休息を適宜とることとしていたが、今回、他船との無線交信等で休息がとれなかった。
05時45分少し過ぎA受審人は、美保関灯台から325度(真方位、以下同じ。)5.6海里の地点に達したとき、針路を地蔵埼と地ノ御前島の中央部に向く144度に定めて自動操舵とし、折からの逆潮流に抗して、右方に6度圧流されながら10.5ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、06時ごろ定針後多数の漁船が点在する海域を航過し終えたあたりから気が緩み、船橋のいすに腰掛けて船橋当直に当たっていたところ、操業の疲れから強い眠気を催したが、あと少しだから我慢できると思い、居眠り運航の防止措置として、休息中の乗組員を起こして2人で船橋当直に当たることなく、依然、いすに腰掛けて船橋当直をして続航するうち、いつしか居眠りに陥り、06時10分美保関灯台から315度1.5海里の地点に達し、地蔵埼西方の陸岸に向首進行していたが、このことに気付かず、同陸岸を避けないまま続航中、福昇丸は、06時15分美保関灯台から296度1,250メートルの地蔵埼西方の陸岸に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の南東風が吹き、乗揚地点付近には微弱な北西流があった。
乗揚の結果、福昇丸は船首部船底に破口などを生じ、プロペラを曲損したが、自力で離礁し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、地蔵埼北西方沖合を漁場から帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同埼西方の陸岸に向首して進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、単独で船橋当直に就いて地蔵埼北西方沖合を漁場から帰航中、眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、居眠り運航の防止措置として、休息中の乗組員を起こして2人で船橋当直に当たるべき注意義務があった。しかるに、同人は、あと少しだから我慢できると思い、2人で船橋当直に当たらなかった職務上の過失により居眠り運航となり、地蔵埼西方の陸岸を避けないまま同陸岸に向首進行して乗揚を招き、船首部船底に破口などを生じ、プロペラを曲損した。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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