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1998年(平成10年)

平成9年函審第74号
    件名
プレジャーボート水幸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年3月12日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大島栄一、大石義朗、平野浩三
    理事官
熊谷孝徳

    受審人
A 職名:水幸船長 海技免状:二級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
推進器及び舵を損傷

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年7月10日11時00分
北海道奥尻島南岸青苗岬付近
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート水幸
全長 10.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 180キロワット
3 事実の経過
水幸は、日産自動車株式会社が製造したCF-1000型と称する長さ9.26メートル幅2.60メートル深さ1.00メートルのFRP製プレジャーボートであるが、遊漁の目的で、A受審人が船長として友人2人を伴い、船首0.10メートル船尾0.90メートルの喫水をもって、平成9年7月10日05時00分北海道瀬棚町吹込漁港を発し、奥尻島北端の稲穂岬に向かった。
06時30分ごろ稲穂岬西方水深約130メートルの沿岸水域に到着して一本釣りに取りかかったA受審人は、その後短時間のうちに予想外の釣果があったので、今回友人の希望を受けて同島南端部に位置する青苗港に寄港してみることとし、09時30分ごろ稲穂岬灯台から290度(真方位、以下同じ。)1.5海里ばかりの地点を発進し、同島西岸沿いの進路で南下した。
釣り場発進後、1人で見張りを兼ねて手動操舵に当たっていたA受審人は、10時42分群来岬の西方に存在するトド島から245度1,000メートルの地点で、針路を青苗岬と室津島間の水路に向首する138度に定め、機関を12ノットの全速力にかけて進行し、同時52分青苗岬灯台から233度1.4海里の地点に達したとき、室津島を右舷側に見ながら青苗岬の南端近くを左舷につけ回すつもりで徐々に左舵をとって続航した。
ところで青苗岬は、奥尻島の南端中央部から南方に向かって突き出た長さ約1,500メートルの細長い岬で、その東岸基部に青苗港があり、同岬の突端からほぼ真南の2.4海里ばかり隔てた海上にある室津島との間には、最深部で約20メートルになる幅員約1.5海里の狭い水道が形成され、小型船舶の常用水域となっているが、青苗岬突端の南方には、距岸600メートルばかりの範囲にわたり、干出岩を含む浅礁帯が拡延していることから、同岬の近くに寄せて航行しようとする船舶は、海図等を検討することにより、かかる水路事情を十分調査しなければ危険な浅礁帯に乗り込むおそれがあった。
ところが、A受審人は、折から視界が良く、自船の喫水も浅いことから、不案内ながら陸上物標を頼りに海岸線近くを無難に通航できるものと安易に考え、保有の海図第11号にあたるなどして青苗岬付近の水路調査を十分行うことなく左転を続け、10時59分青苗岬灯台から180度1,400メートルの地点に迫ったとき、左舷前方の青苗港南防波堤越しに青苗港北防波堤灯台が視認できたので、直ちにこれを左舷船首22度ばかりに見る032度の針路に転じ、危険な浅所に向首する態勢となっていることに気付かず全速力のまま進行中、11時00分青苗岬灯台から172度1,100メートルの地点において、突然干出岩至近の浅礁に乗り揚げ、これを擦過した。
当時、天候は曇で風力2の南風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、推進器及び舵を損傷し、漂流中のところ地元漁船に発見され、のち青苗港に引き付けられた。

(原因)
本件乗揚は北海道奥尻島の南岸を迂(う)回して青苗港に入航するにあたり、水路調査が不十分で、青苗岬の南方沖に拡延する浅礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、奥尻島の南岸を迂回して青苗港に入航しようとする場合、青苗岬付近の水路事情が不案内であったから、海図等にあたって同岬周辺の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、視界が良く自船の喫水が浅いことから海岸線近くを無難に通航できるものと安易に考え、海図の検討などによる同岬周辺の十分な水路調査を怠った職務上の過失により、同岬沖に拡延する浅礁の存在に気付かないまま、これに向首進行して乗り揚げ、推進器及び舵に損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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