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1998年(平成10年)

平成9年那審第33号
    件名
漁船博豊丸乗揚事件〔簡易〕

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年2月17日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

東晴二
    理事官
阿部能正

    受審人
A 職名:博豊丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底2箇所に破口、魚倉及び機関室に浸水

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年1月16日21時30分
鹿児島県沖永良部島南岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船博豊丸
総トン数 1.32トン
登録長 6,70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 25
3 事実の経過
博豊丸は、舵柄により操舵するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、船首0.1メートル船尾0.4メートルの喫水をもって、平成9年1月16日19時鹿児島県沖永良部島知名漁港を発し、同漁港東方において、さんご礁外縁付近でこれに沿って低速力で前進しながら行ういか手釣り漁に従事したが、漁獲がなかったので、同漁港の西方に移動して漁を続けた。
A受審人は、依然漁獲がなく、その後もあまり期待できなかったので、21時知名港指向灯(以下「指向灯」という。)から292度(真方位、以下同じ。)1.9海里の地点を発し、漁を続けながら帰途に就き、同時24分指向灯から273度2,000メートルの地点に達したとき、さんご礁外縁にもっと近づけば釣れることもあるので、針路をさんご礁外縁に寄る119度に定め、機関を2.5ノットの極微速力前進にかけ、船尾甲板において右手で釣り糸を保持し、左手で舵柄を操作し、砕ける波でさんご礁外縁が分かる状況のところ、これに沿うように進行し、同時28分さんご礁外縁が左舷側30メートルばかりとなり、その隔たりを維持しながらほぼ同一針路で続航した。
21時29分半A受審人は、釣り糸にいかが掛かった手応えを感じ、その後釣り糸ばかりに気を遣い、さんご礁外縁までの隔たりを確かめることによる船位の確認を十分に行わず、そのためさんご礁外縁までの隔たりを維持するようにそれまでどおり操舵せず、さんご礁外縁に著しく接近する状況であったが、そのことに気付かないでいるうち、21時30分突然衝撃を受け、指向灯から266度1,600メートルの地点において、80度ばかりを向いてさんご礁外縁に乗り揚げた。
当時、天候は曇で、風力2の北北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、博豊丸は、船底2箇所に破口を生じ、魚倉及び機関室に浸水したが、僚船により引き下ろされ、のち修理された。A受審人は、乗揚後間もなく家族に連絡するとともに、投錨の措置をとったうえ陸上に逃れ、無事であった。

(原因)
本件乗揚は、夜間、鹿児島県沖永良部島南岸において、砕ける波によりさんご礁外縁が分かる状況の下、さんご礁外縁近くをこれに沿って進行しながら、いか手釣り漁中、釣り糸にいかが掛かった手応えがあった際、さんご礁外縁までの隔たりを確かめることによる船位の確認が不十分で、さんご礁外縁に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、沖永良部島南岸において、砕ける波によりさんご礁外縁が分かる状況の下で、いか手釣り漁のためさんご礁外縁近くをこれに沿って進行する場合、さんご礁外縁に著しく接近しないよう、さんご礁外縁までの隔たりを確かめることにより船位を確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、釣り糸にいかが掛かった手応えを感じたとき、釣り糸にばかり気を遣い、船位を確認しなかった職務上の過失により、さんご礁外縁に著しく接近して乗り揚げ、船底に破口を生じさせるに至った。






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