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1998年(平成10年)

平成9年横審第98号
    件名
プレジャーボートジップドルフィン乗揚事件〔簡易〕

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年3月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

原清澄
    理事官
清重隆彦

    受審人
A 職名:ジップドルフィン船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
プロペラを曲損、船底に擦過傷

    原因
針路選定不適切

    主文
本件乗揚は、針路の選定が不適切で、東京湾内の第1海堡に向首進行したことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年8月14日10時30分
東京湾内第1海堡
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートジップドルフィン
全長 7.05メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 66キロワット
3 事実の経過
ジップドルフィンは、FRP製のプレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、同乗者1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.40メートル船尾0.72メートルの喫水をもって、平成9年8月14日07時30分京浜港東京区の係船地を発し、千葉県安房郡鋸南町保田沖合の釣り場に向かった。
A受審人は、10時14分半木更津港東電富津火力北防波堤灯台から306度(真方位、以下同じ。)1,700メートルの地点に達したとき、針路をほぼ第1海堡に向首する216度に定め、機関を13.5ノットの前進にかけ、操舵輪のところに立って手動操舵により進行した。
A受審人は、10時27分第1海堡をほぼ正船首350メートルのところに認める状況となった際、以前にも同海域を何回か航行した経験から同海堡の周辺には浅所が存在することを認識していたが、同海堡に接近する進路で航行すれば、乗船が初めての同乗者も喜ぶだろうと思い、速やかに同海堡を十分に離す針路とすることなく、速力を5.5ノットに減じただけで続航した。
A受審人は、10時29分第1海堡から約100メートルの距離まで接近する状況となったものの、水深が1メートルくらいとなれば航行を停止するつもりで、依然として同海堡を十分に離す針路としないまま、2ノットの速力に落として進行中、同時30分第2海堡灯台から081度1.4海里の浅所に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、プロペラを曲損したほか、船底に擦過傷を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、東京湾内において、第1海堡の北東方沖合を千葉県安房郡鋸南町保田沖合の釣り場に向かって南下中、針路の選定が不適切で、第1海堡に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、東京湾内において、第1海堡の北東方沖合を千葉県安房郡鋸南町保田沖合の釣り場に向かって南下する場合、同海堡の周辺が浅所となっていることを過去の航行経験から知っていたのであるから、同海堡を十分に離す針路とすべき注意義務があった。しかるに、同人は、第1海堡に接近する進路で航行すれば乗船が初めての同乗者も喜ぶだろうと思い、同海堡を十分に離す針路としなかった職務上の過失により、原針路のまま、第1海堡に向けて直進し、同海堡の沖合に存在する浅所に乗り揚げ、プロペラを曲損させたほか、船底に擦過傷を生じさせるに至った。






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