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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成8年7月24日02時30分 青森県三沢漁港南方 2 船舶の要目 船種船名
漁船第十八金重丸 総トン数 131トン 登録長 29.41メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 441キロワット 3 事実の経過 第十八金重丸は、一本釣り(いか)漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、操業の目的で、平成8年7月19日18時山形県酒田港を発し、三陸沖合の漁場に向かい操業を行った後、いか約3.5トンを漁獲したところで、日本海の大和堆付近漁場で好漁が期待されるとの情報を得て操業をやめ、同漁場に移動することとし、同月23日20時船首1.60メートル船尾2.80メートルの喫水をもって、岩手県黒崎東方沖合13.5海里ばかりの地点を発進し、津軽海峡に向け北上した。 発進後、A受審人は、一人で操舵操船に当たり、北上していたところ、乗組員の一人が激しく船酔いして目的漁場に達するのが困難となったので、船舶所有者に船舶電話で連絡を取った後、同乗組員を下船させるため、青森県八戸港に寄せようとし、21時20分ごろ陸中黒埼灯台から047度(真方位、以下同じ。)14海里の地点に達したとき針路を鮫角灯台の北東方3.5海里に向く315度に定め、機関を9ノットの全速力前進にかけ、折から霧雨で視程が約1海里となったなか、レーダーを1.5海里レンジに使用し、自動操舵で進行した。 ところで、A受審人は、八戸港には他船で入港した経験があり、同港の様子を記憶していた。 こうして、A受審人は、操舵室の右舷側のいすに座って、目前のレーダーを見張りながら同針路で続航し、22時29分久慈牛島灯台から060度9.2海里の地点で針路を311度に転じて進行していたところ、翌24日01時11分鮫角灯台から041度2.1海里に達し、八戸港に向ける地点となったものの、レーダーのレンジが小さく、陸地を探知しないまま、これに気付かずに続航した。 02時14分A受審人は、前路に灯台の灯火を視認し、三沢港内東防波堤灯台から131度1海里の青森県三沢漁港の沖合に達してしまったが、そのときレーダーで、同港の外南防波堤とそれに続いて海岸に向かって延びている護岸及び同護岸の南方に設けられている別の護岸を探知し、両護岸の位置関係を記憶していた八戸港港口の防波堤のものと思い、レーダーのレンジを遠距離に切り替え、付近地形を探知するなどして、船位を十分に確認することなく、機関を約4.5ノットの微速力前進とし、乗組員を上甲板にあげて接岸作業の準備を行わせ、手動操舵に切り替えて進行し、同時21分同灯台から同方位0.5海里の地点で、針路を両護岸の中間に沿う255度に転じて続航中、02時30分三沢港内東防波堤灯台から200度0.3海里の地点において、原針路、原速力で海岸に乗り揚げた。 当時、天候は霧雨で風力2の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。 乗揚の結果、舵及び魚群探知機に損傷を生じ、三沢漁業共同組合所属の漁船等の救援を受け、離礁して八戸港に引き付けられ、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、夜間、三陸沖合の漁場から日本海の漁場に向けて北上中、青森県三沢漁港沖合に達した際、船位の確認が不十分で、同港南方の海岸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人が、夜間、一人で航海当直に当たり、三陸沖合の漁場から日本海の漁場に向けて北上中、青森県八戸港に寄せようとし、同県三沢漁港沖合に達してしまった場合、1.5海里レンジとしたレーダーで探知した、同港の外南防波堤とそれに続いて海岸に向かって延びている護岸及び同護岸の南方に設けられている別の護岸とが、八戸港港口の防波堤かどうかが判断できるよう、レーダーを遠距離レンジに切り替え、付近地形を探知するなどして、船位を十分に確認すべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、同両護岸の位置関係が、記憶していた八戸港港口の防波堤のものと思い、船位を十分に確認しなかった職務上の過失により、三沢漁港南方の海岸に向首進行して乗り揚げ、舵及び魚群探知機に損傷を生じさせるに至った。 |