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1998年(平成10年)

平成9年神審第48号
    件名
貨物船第八栄徳丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年2月26日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

織戸孝治、佐和明、山本哲也
    理事官
坂爪靖

    受審人
A 職名:第八栄徳丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船底外板に小破口を伴う凹損、船首水槽に浸水

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年9月13日02時20分
兵庫県鞍掛島
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八栄徳丸
総トン数 194.25トン
登録長 46.21メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 441キロワット
3 事実の経過
第八栄徳丸(以下「栄徳丸」という。)は、主に瀬戸内海各港間の鋼材輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、A受審人及び同人の母親である機関長の2人が乗り組み、鋼材520トンを積載し、船首2.6メートル船尾3.7メートルの喫水をもって、平成8年9月11日10時30分山口県宇部港を発し、大阪府阪南港に向かった。
ところで、A受審人は、ほとんどの航海が4ないし5時間程度と短かったので、通常、船橋航海当直を1人で行っていたが、月に1回程度九州方面へ長距離航海をすることがあり、その際は、広い海域に出たときに2時間ばかり機関長と当直を交代して休息をとりながら航海を継続していた。
こうして、A受審人は、字部港発航後、短時間の休息を3回ほどとったものの連続した休息がとれず、睡眠不足の状態のまま単独で船橋当直を続け、翌々13日01時42分播磨灘家島諸島の尾崎鼻灯台から311度(真方位、以下同じ。)0.8海里の地点に達したとき、針路を090度に定め、機関を全速力前進にかけ、9.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
A受審人は、舵輪後方のいすに腰掛けて当直に当たり、02時06分鞍掛島灯台から279度2.1海里の地点で、針路を自動操舵のまま鞍掛島に向首する100度に転じて続航中、同島に1海里ばかりに接近したとき明石海峡に向く針路に再度右転する予定でいたところ、眠気を催すようになった。しかしながら、同人は、まさか居眠りすることはないと思い、居眠り運航の防止措置として、休息中の機関長を起こして2人で当直に当たることなく、そのまま当直を続けているうち、いつしか居眠りに陥った。
その後、A受審人は、明石海峡への予定転針点に達したが、居眠りしてこのことに気付かず、転針することなく進行し、栄徳丸は、02時20分鞍掛島灯台から150度200メートルの鞍掛島の海岸に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は雨で風力2の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船底外板に小破口を伴う凹損を生じて船首水槽に浸水し、来援したサルベージ船により引き降ろされ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、播磨灘家島諸島付近の海域を東行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、鞍掛島に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、睡眠不足の状態で単独の船橋当直に当たって播磨灘家島諸島付近の海域を東行中、眠気を催した場合、このまま単独の当直を続けると居眠りに陥るおそれがあったから、居眠り運航防止措置として、休息中の機関長を起こして2人で当直すべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか居眠りすることはないと思い、機関長を起こさなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、鞍掛島に向首進行して乗揚を招き、船底外板に小破口等の損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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