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1998年(平成10年)

平成9年仙審第55号
    件名
漁船第五十三龍房丸乗揚事件〔簡易〕

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年2月19日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

葉山忠雄
    理事官
副理事官 小金沢重充

    受審人
A 職名:第五十三龍房丸漁労長兼一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船底外板に凹損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年2月7日00時07分
宮城県網地島南東方
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十三龍房丸
総トン数 65トン
全長 31.03メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 698キロワット
3 事実の経過
第五十三龍房丸は、沖合底びき網漁に従事する船首船橋型の鋼製漁船で、A受審人ほか6人が乗り組み、操業の目的で、平成9年2月5日01時ごろ宮城県石巻港を発し、同港南東方沖合の漁場に向かい、操業を行った後、漁獲物約10トンを積載し、船首2.00メートル船尾4.40メートルの喫水をもって、翌6日22時36分同漁場を発進し、同港への帰航の途に就いた。
発進時、A受審人は、一人で操舵操船に当たり、他の乗組員全員を甲板作業に就かせて西進し、23時47分金華山灯台から193度(真方位、以下同じ。)1.5海里の地点に達したとき、針路を263度に定め、機関を10.5ノットの全速力前進にかけ、自動操舵で進行した。
ところで、A受審人は、同針路線上で宮城県牡鹿半島と同県網地島及び田代島両島との間の水道を見通す、濤波岐(どうみき)埼灯台から88度1.7海里の地点に達したとき、針路を同水道の中間に向けて転じる予定であった。
こうして、A受審人は、操舵スタンドの船尾側のいすに座って周囲を見張りながら同針路で続航していたところ、23時59分針路を転じる予定の地点に達したが、次回の操業海域を選定することに気を奪われ、船位の確認を十分に行わないで、網地島南東方の拡延した浅瀬に向首進行する状況となった。
翌7日00時06分半A受審人は、同浅瀬に150メートルばかりに近づいたものの、依然、船位の確認が不十分で、これに気付かず、そのままの針路で続航中、第五十三龍房丸は、00時07分濤波岐埼灯台から108度500メートルの同浅瀬に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力3の北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船底外板に凹損を生じたが、自力離礁して目的地に向かい、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、漁場から宮城県石巻港に帰航中、同県牡鹿半島と網地島及び田代島両島との間の水道に向首しようとする際、船位の確認が不十分で、網地島の南東方に拡延する浅瀬に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、一人で航海当直に当たり、漁場から宮城県石巻港に帰航中、同県牡鹿半島と網地島及び田代島両島との間の水道に向首しようとする場合、針路を転じる予定の地点に達したかどうか分かるよう、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、次回の操業海域を選定することに気を奪われ、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、網地島南東方に拡延する浅瀬に乗り揚げ、船底外板に凹損を生じさせるに至った。






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