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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年3月11日16時20分 沖縄県新城島上地地区北端付近 2 船舶の要目 船種船名
交通船第十八あんえい号 総トン数 19トン 全長 25.50メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 1,471キロワット 3 事実の経過 第十八あんえい号(以下「あんえい号」という。)は、操舵室が船首部に配置された軽合金製交通船で、船舶所有者から有限会社Aが借り受け、沖縄県石垣港と同県西表島船浦港もしくは同島仲間港との間で定時運航していたもので、臨時便として、沖縄県新城島上地港から石垣港行きの客を乗せるため、A受審人ほか甲板員1人が乗り組み、船首0.80メートル船尾1.10メートルの喫水をもって、平成9年3月11日16時石垣港を発し、上地港に向かった。 ところで、新城島上地地区北西側水域は、浅所や暗岩が散在するさんご礁地帯となっていて、大原航路(通称)から離れ、同水域を航行して上地港に至る水路として、大原航路第21号立標(以下、立標の名称については「大原航路」を省略する。)を経て上地港に向かう危険の少ない水路と、第17号立標付近から上地地区北端沖合に達したのち、目視により浅所や暗岩に近付かないようにしながら、同地北西岸に沿って上地港少し沖合に至る、レーダーはあまり有効でない上地地区寄りの水路とがあり、浅所や暗岩が目視できるかどうかの海面の状態により使い分けられていた。 また、A受審人は、あんえい号船長としてときどき上地港に寄港することがあり、同港付近の水路についてはよく知っていた。 こうして、A受審人は、竹富島南側の竹富島南水路を経て、大原航路に入り、16時14分半第15号立標の南側至近を通過したとき、時間短縮のため上地地区寄りの水路を航行しようと、針路を第17号立標の南方に向首する232度(真方位、以下同じ。)に定め、機関を全速力前進にかけ、36.0ノットの速力で進行した。 16時17分A受審人は、第19号立標から105度1.2海里の地点に達したとき、針路を上地地区北端沖合に向く250度に転じたが、このとき太陽が西方に傾いており、海面が鏡状となっていて、浅所や暗岩が目視しにくい状態であったが、なんとか上地地区北端のさんご礁外縁の浅所を目視したうえ、同地区寄りの水路を航行できると思い、第21号立標を経て上地港に向かう水路を航行しないで続航した。 A受審人は、上地地区北端のさんご礁外縁の浅所を探しながら進行中、16時19分第19号立標から180度1,000メートルの地点に達したとき、同浅所を目視できなかったので、もう少し同地区北端に近付くため機関を10.0ノットの微速力前進に減じるとともに、左舵とし、ゆっくり左転中、同時20分少し前220度に向首したとき、同浅所を目視できないまま上地地区北端が近くなったことから、危険を感じて反転しようと、右舵一杯とした。 こうして右転中、16時20分第19号立標から190度1,250メートルの地点において、あんえい号は、320度に向首して上地地区北端のさんご礁外縁の浅所に乗り揚げ、擦過した。 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の初期であった。 乗揚の結果、いずれも左舷の舵、プロペラ及びプロペラ軸を損傷し、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、沖縄県石垣港から同県新城島上地港に向かう際、浅所や暗岩が目視しにくい状態の下、針路の選定が不適切で、目視により浅所や暗岩に近付かないようにしながら上地港少し沖合に至る上地地区寄りの水路を航行し、同地区北端のさんご礁外縁の浅所に接近したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、沖縄県石垣港から同県新城島上地港に向かう場合、太陽が傾き、海面が鏡状になっていて、浅所や暗岩が目視しにくい状態であったから、第21号立標を経て上地港に向かう危険の少ない水路を航行すべき注意義務があった。しかるに、同人は、浅所や暗岩をなんとか目視できるものと安易に考え、目視により浅所や暗岩に近付かないようにしながら上地港少し沖合に至る上地地区寄りの水路を航行し、第21号立標を経て上地港に向かう危険の少ない水路を航行しなかった職務上の過失により、同地区北端のさんご礁外縁の浅所に乗り揚げ、プロペラ等に損傷を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |