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1998年(平成10年)

平成8年広審第129号
    件名
貨物船第二十七鳳生丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年2月12日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

平田照彦、畑中美秀、黒岩貢
    理事官
向山裕則

    受審人
A 職名:第二十七鳳生丸一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船底外板に亀裂を伴う凹損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成7年12月8日23時15分
瀬戸内海備讃瀬戸小瀬居島
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第二十七鳳生丸
総トン数 452トン
登録長 58.51メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 956キロワット
3 事実の経過
第二十七鳳生丸(以下「鳳生丸」という。)は、船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか5人が乗り組み、空船のまま、船首1.8メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成7年12月8日15時05分広島県佐伯郡沖美町を発し、神戸港に向かった。
A受審人は、船長と6時間交代で船橋当直を行っており、19時10分ごろ来島海峡の東口で昇橋し、当直に就いて備後灘推薦航路線に沿って東行し、22時04分備讃瀬戸南航路に入り、同時27分高見港防波堤灯台から097度(真方位、以下同じ。)1,100メートルばかりの地点に達したとき、針路を063度に定めて自動操舵とし、機関を10.0ノットの全速力前進にかけ、折からの順潮流に乗じて10.8ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、発航前、積荷の建設廃材を陸揚げするとき、ハッチカバーにトラブルがあって揚げ荷役に長時間を要したが、その後休息をとらず、いくぶん疲労ぎみで当直に就き、操舵スタンドと船橋前壁との間にある長いすに腰をかけて見張りを行っていたところ、22時55分ごろ牛島付近に至ったとき、眠気を覚えたが、船長に報告して機関当直員による見張りの増員を要請するなどの居眠り運航の防止措置をとることなく、コーヒーを飲めば眠気がとれるものと思い、長いすから立ち上がってインスタントコーヒーを飲んだのち、操舵スタンドにもたれかかって見張りを行っているうち、いつしか居眠りに陥り、鳳生丸は、原針路のまま続航し、23時15分小瀬居島灯台から242度200メートルの同島西端に乗り揚げた。
当時、天気は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、付近海域には約0.8ノットの東北東への潮流があった。
乗揚の結果、船底外板に亀裂を伴う凹損を生じ、引船によって離礁したのち、自力で回航したあと修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、備讃瀬戸南航路を東行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、小瀬居島に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、備讃瀬戸南航路を東行中、眠気を覚えた場合、機関当直員による見張りの増員を船長に要請するなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、コーヒーを飲めば眠気がとれるものと思い、船長に機関当直員の増員を要請するなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥って小瀬居島への乗揚を招き、船底外板に損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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