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1998年(平成10年)

平成9年横審第75号
    件名
漁船第十七辨天丸乗揚事件〔簡易〕

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年1月30日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

大本直宏
    理事官
山田豊三郎

    受審人
A 職名:船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首及び左舷側の各船底部に小破口

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年11月22日03時40分
南方諸島ベヨネース列岩
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十七天丸
総トン数 59.37トン
全長 35.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 485キロワット
3 事実の経過
第十七辧天丸は、かつお・まぐろ一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか7人が乗り組み、船首2.20メートル船尾3.30メートルの喫水をもって平成8年11月21日07時00分静岡県戸田港を発し、同県内浦漁港に寄ってえさを仕込み、青ヶ島南南東方沖合の明神礁付近の漁場に向かった。
翌22日02時20分A受審人は、南方諸島のベヨネース列岩から358度(真方位、以下に同じ。)7海里の地点において、機関を停止して漂泊を開始したが、折からの北西風のみによって、目的の海域付近まで圧流されるものと思い、漂泊地点付近の海潮流が複雑であることを知っていたのであるから、圧流模様が判断できるよう、自ら航海当直を継続するなり、他の乗組員を入直させるなりして同当直を維持し、レーダーなどを活用して船位を確認することなく、操業予定時刻の05時まで自らも休息することにし、操舵室を無人にして就寝した。
こうして、A受審人は、第十七辧天丸が、北西風を右舷側から受けて船首を南西に向け、風と海潮流によって178度に5.2ノットで圧流されていることに気付かず、就寝中に突然の衝撃を感じ、03時40分北緯31度53分東経139度55分に存在するベヨネース列岩の北側に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力4の北西風が吹き、潮候は高潮期であった。
乗揚の結果、船首及び左舷側の各船底部に小破口など損傷を生じた。

(原因)
本件乗揚は、南方諸島のベヨネース列岩の北方沖において漂泊中、船位の確認が不十分で、同列岩に向け圧流されたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、南方諸島のベヨネース列岩の北方海域で機関を停止して漂泊を開始する場合、漂泊地点付近の海潮流が複雑であることを知っていたのであるから、圧流模様が判断できるよう、自ら航海当直を継続するなり、他の乗組員を入直させるなりして同当直を維持し、レーダーなどを活用して、船位を確認すべき注意義務があった。しかし、同人は、折からの北西風のみによって、目的の海域付近まで圧流されるものと思い、船位を確認しなかった職務上の過失により、同列岩北側への乗揚を招き、船首及び左舷側の各船底部に小破口などの損傷を生じさせるに至った。






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