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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年7月27日09時35分 沖縄県伊良部島長山港沖合 2 船舶の要目 船種船名
貨物船よね丸 総トン数 499トン 全長 81.55メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 1,323キロワット 3 事実の経過 よね丸は、航行区域を近海区域とし、沖縄県各港間におけるコンテナ貨物、鋼材、セメントなどの輸送に従事する可変ピッチプロペラ装備の船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか5人が乗り組み、空のコンテナ10個を積載し、船首2.60メートル船尾3.90メートルの喫水をもって、平成9年7月27日09時27分伊良部島長山港を発し、平良港に向かった。 離岸後A受審人は、甲板員1人及び機関操作を行う一等機関士を船橋に、一等航海士を船首に配置し、自分は遠隔管制器により操舵しながら操船に当たり、09時32分長山港東口第6号立標(以下「第6号立標」という。)から286度(真方位、以下同じ。)1,220メートルの地点に達し、長山港防波堤入口を通過したとき、針路を長山水路第5号灯浮標(以下「第5号灯浮標」という。)を正船首少し右方に見る121度に定め、一等機関士に13ノットの全速力前進とするよう指示した。 そのころA受審人は、左舷船首方の長山水路第8号灯標付近に長山港に入る引船列を認め、このままでは浅礁が存在する第5号灯浮標付近で同引船列と出会うこととなるので、引船列が先に第5号灯浮標を通過するよう、水路の北東側に寄り、必要ならば減速して時間調整しようと、間もなく左舷とした。 A受審人は、左舷として回頭惰力が付いたところでこれを止めるように右舷をとるという方法を3回ばかり繰り返すうち、09時33分半第6号立標から285度830メートルの地点に達したとき、速力が次第に増す状況のところ、針路が水路北東側の浅い水域に接近する090度となったが、その後引船列ばかりに気を取られ、第6号立標、第5号灯浮標などにより船位を確認することなく進行した。 9時35分少し前A受審人は、水路北東側に寄せるばかりでなく減速しようと思っていたところ、右舷船首方近距離に第6号立標を認め、浅い水域に近づき過ぎていると感じて右舵とし、機関停止としたが、間に合わず、09時35分第6号立標から302度420メートルの地点において、よね丸は、130度に向き、10.0ノットばかりの速力で浅所に乗り揚げ、擦過した。 当時、天候は晴で風力1の北東風が吹き、潮侯は上げ潮の初期であった。 乗揚の結果、船体中央部から後方の船底左舷側に凹損を生じ、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、沖縄県伊良部島長山港防波堤入口から第5号灯浮標に至る水路を航行中、長山港に入る引船列と、浅礁が存在する第5号灯浮標付近で出会うのを避けるため、同水路北東側に寄せた際、船位の確認が不十分で、同水路北東側の浅い水域に近づき過ぎたことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、沖縄県伊良部島長山港防波堤入口から第5号灯浮標に至る水路を航行中、長山港に入る引船列と、浅礁が存在する第5号灯浮標付近で出会うのを避けるため、同水路北東側に寄せた場合、同水路北東側の浅い水域に近づき過ぎないよう、第6号立標、第5号灯浮標などにより船位を確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、引船列ばかりに気を取られ、船位を確認しなかった職務上の過失により、同水路北東側の浅い水域に近づき過ぎて乗揚を招き、船底に凹損を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |