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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年11月23日22時40分 沖縄県チービシ 2 船舶の要目 船種船名
漁船勝丸 総トン数 1.93トン 全長 10.60メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 73キロワット 3 事実の経過 勝丸は、はえ縄、1本釣りなどの漁業に従事し、操舵が舵柄によるFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、船首0.1メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成9年11月21日15時00分沖縄県中頭郡北谷町浜川漁港を出港し、渡名喜島水域に至って操業を開始し、翌々23日日没後同島南側で操業中、東風が強くなり、波も高くなったことから、漁場を変えるため、20時00分あおだいなど約12キログラムを漁獲したとき、渡名喜港灯台から142度(真方位、以下同じ。)1.6海里の地点を発し、慶良間列島水域に向かった。 A受審人は、慶良間列島黒島に近づいたころ、慶良間列島水域よりも浜川漁港に近いチービシ水域まで航行し、同水域で夜明けまで操業するという計画に変更し、21時49分慶良間黒島南方灯標から348度1.3海里の地点に達したとき、針路を096度に定め、機関を半速力前進にかけ、8.0ノットの対地速力で進行した。 ところで、A受審人は、平素日帰りの操業を行っていたが、今回初めて3泊4日の操業を予定し、渡名喜島水域において操業を続けていたもので、出港後休息したのは21日22時から翌22日05時までの渡名喜島南側における錨泊中と22日16時から翌23日06時までの渡名喜漁港内における錨泊中とであり、これら休息時間以外は操業に従事し、休息中も睡眠が十分に取れず、そのため渡名喜島水域発航時、疲労がたまり、かつ睡眠が不足した状態となっていた。 定針後間もなくA受審人は、疲労と睡眠不足により眠気を感じるようになったが、なんとか目的のチービシ水域まで航行できると思い、備えていたGPSプロッター及び魚群深知機を活用して付近島嶼(しょ)の適当な地点に投錨したうえ、いっとき休息するなどの居眠り運航防止のための措置をとることなく続航し、22時13分端島灯台を右舷1.0海里で通過し、その後右手で舵柄を操作しながら左手で日除け用左舷支柱につかまり、同支柱に寄りかかった姿勢でいるうち、間もなく居眠りし始めた。 こうして勝丸は、定めた針路が保持されず、船位が次第に左方に偏し、22時40分ナガンヌ島南西方灯標から105度200メートルの地点において、080度に向首してチービシ水域ナガンヌ島南西方のさんご礁の浅所に乗り揚げた。 当時、天候は曇で、風力3の東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。 A受審人は、衝撃で目覚めて機関を停止し、もりなどにより海底を突いて離礁したが、機関が使用できない状態となっていたので、投錨して救助を求めた。 乗揚の結果、勝丸は、プロペラ、プロペラ軸、軸ブラケット及び舵を損傷し、巡視船により、次いで僚船により曳(えい)航されて浜川漁港に帰り、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、夜間、沖縄県渡名喜島水域から同県チービシ水域に向かって航行中、居眠り運航防止のための措置が不十分で、チービシ水域ナガンヌ島南西方のさんご礁の浅所に接近したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、沖縄県渡名喜島水域から同県チービシ水域に向かって航行中、疲労と睡眠不足により眠気を感じた場合、付近島嶼の適当な地点に投錨して休息するなど、居眠り運航防止のための措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、なんとか目的のチービシ水域まで航行できると思い、居眠り運航防止のための措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りし、チービシ水域ナガンヌ島南西方のさんご礁の浅所に接近して乗揚を招き、プロペラ等に損傷を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判方第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |