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1998年(平成10年)

平成9年広審第35号
    件名
貨物船第五高砂丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年4月16日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

上野延之、畑中美秀、平田照彦
    理事官
道前洋志

    受審人
A 職名:第五高砂丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
B 職名:第五高砂丸一等航海士 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首船底に破口、凹損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Bの五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年7月15日13時48分
岡山県宇野港沖の下鳥島
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第五高砂丸
総トン数 199.77トン
登録長 49.98メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第五高砂丸は、専ら瀬戸内海の諸港間の原塩輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、A及びB両受審人ほか1人が乗り組み、石膏651トンを載せ、船首3.1メートル船尾3.6メートルの喫水をもって、平成8年7月15日12時05分岡山県玉島港を発し、兵庫県赤穂港に向かった。
A受審人は、船橋当直をB受審人と自らによる単独2時間制とし、13時15分下津井瀬戸付近で、その後通過する葛島と直島間の最狭部付近の可航幅が約500メートルなので自ら船舶を指揮するまでもないことから、船長経験が長く、瀬戸内海の狭い水道の通峡経験も豊富なB受審人に船橋当直を引き継いで降橋した。
B受審人は、船橋当直を引き継いだのち、見張りをしながら操舵操船に当たり、13時42分少し前葛島灯台から132度(真方位、以下同じ。)380メートルの地点で、針路を006度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの順潮流に乗じて11.5ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
B受審人は、定針したころ右舷船首方に同航の漁船を視認し、このまま航行すれば直島北西方灯浮標付近の予定転針地点の手前で追い抜くことができると思ってそのまま続航し、13時44分半葛島灯台から027度800メートルの地点に達したとき、右舷船首近距離に認めた同船に気を奪われ、船位の確認を十分に行うことなく、同時45分半讃岐寺島灯台から254度880メートルの予定転針地点を航過したが、このことに気付かずに下鳥島に向首進行中、同時48分少し前回航の漁船を迫い抜いて右転しようとし、ふと前方を見たところ下鳥島を正船首至近に認めたがどうすることもできず、第五高砂丸は、13時48分讃岐寺島灯台から310度1,000メートルの地点の下鳥島南岸に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の南風が吹き、潮侯は下げ潮の中央期であった。
A受審人は、乗揚の衝撃で目を覚まして昇橋し、事故の措置に当たった。
乗揚の結果、船首船底に破口、凹損を生じたが、自力離礁して宇野港に回航し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、岡山県宇野港沖の下鳥島付近を北上中、船位の確認が不十分で、同島に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
B受審人は、岡山県宇野港沖の下鳥島付近で、右舷船首方に同航の漁船を見ながら予定転針地点に向けて進行する場合、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同船に気を奪われ、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、予定転針地点を航過し、下鳥島に向首進行して乗揚を招き、船首部船底外板に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

よって主文のとおり裁決する。






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