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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成7年3月28日14時50分 明石海峡淡路島北西岸 2 船舶の要目 船種船名
貨物船第三眉山丸 総トン数 305トン 全長 61.58メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 735キロワット 3 事実の経過 第三眉山丸は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、関東・北九州間の諸港に寄せて貨物の輸送に従事していたところ、平成7年3月27日13時30分兵庫県赤穂港から同県東播磨港別府地区に至り、錨泊したのちに夕刻着岸した。そして、翌28日08時10分荷役を開始し、亜鉛701トンを積載のうえ、船首2.40メートル船尾3.80メートルの喫水をもって、13時30分同港を発し、茨城県鹿島港に向かった。 ところで、A受審人は、東播磨港に着岸後は船内にとどまり8時間ばかりの睡眠をとることができ、荷役中は船橋などで積付け状況を見ていたものの、発航時には疲労が蓄積した状態ではなく、体調は良好であった。 A受審人は、従来どおり船橋当直を一等航海士と6時間交替制とし、自ら出港操船に引き続き単独でこれに当たり、14時03分半東播磨港別府西防波堤灯台から215度(真方位、以下同じ。)1.3海里の地点で、針路を128度に定め、機関の回転数を全速時よりも少し下げ、12.0ノットの対地速力で自動操舵により播磨灘を東行した。 14時30分半A受審人は、林崎港5号防波堤灯台から250度3.3海里の地点で、カンタマ南灯浮標を左舷側150メートルに通過したとき、明石海峡航路西方灯浮標を船首少し左方に見るように針路を120度に転じ、同灯浮標を同じく左舷側にかわしてから明石海峡航路に向けるつもりで、折からの東流により3度左方に圧流されながら同一速力で進行した。 やがてA受審人は、付近には他船は見当たらず、立ったまま操舵スタンドにもたれた姿勢で見張りに当たっていたところ、14時35分ごろ眠気を催すようになった。しかしながら、まさか居眠りすることはないと思い、冷気にあたり眠気を払拭(ふっしょく)するなど居眠り運航の防止措置をとらないでいるうち、いつしか居眠りに陥り、同時42分少し過ぎ明石海峡航路西方灯浮標を通過したことに気付き得ず、予定の転針が行われないまま続航した。 こうしてA受審人は、依然居眠りを続けていたので、14時50分江埼灯台から236度2,200メートルの地点において、第三眉山丸は、その前部船底を淡路島北西岸至近の浅所に原針路、原速力のまま乗り揚げた。 当時、天候は曇で風力2の北北西風が吹き、視界は良好で、潮候は上げ潮の中央期に属していた。 A受審人は、船体に衝撃を感じて目を覚まし、事後の措置に当たった。 乗揚の結果、翌朝サルベージ船によって引き下ろされ、目的地に向けて航海を継続したが、船底前部外板に長さ3メートル幅2メートルのほか、3箇所に最大深さ20センチメートルの凹損を生じ、右舷側前部ビルジキールが折損し、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、明石海峡西方を東行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、淡路島北西岸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、単独で船橋当直に当たり明石海峡西方を東行中、眠気を催した場合、居眠り運航となるおそれがあったから、冷気にあたり眠気を払拭するなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか居眠りすることはないと思い、冷気にあたり眠気を払拭するなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、予定の転針が行われずに淡路島北西岸至近の浅所に乗り揚げ、船底前部外板に凹損を生じさせ、右舷側前部ビルジキールを折損させるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |