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1998年(平成10年)

平成9年仙審第93号
    件名
漁船第八善宝寺丸防波堤衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年10月27日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

高橋昭雄
    理事官
黒田均

    受審人
A 職名:第八善宝寺丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部を圧壊

    原因
操船・操機不適切(操舵装置切替え後の作動確認)

    主文
本件防波堤衝突は、操舵装置切替え後の作動確認が十分に行われなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年5月17日01時10分
福島県四倉港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第八善宝寺丸

総トン数 12.12トン
登録長 13.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 330キロワット
3 事実の経過
第八善宝寺丸は、自動操舵装置を装備した船体中央部に操舵室を有するFRP製船で、A受審人ほか甲板員1人が乗り組み、日帰りの底びき網漁の目的で、平成9年5月17日01時00分福島県四倉港第1船だまりを発し、同港5海里沖合の漁場に向かった。

ところで、A受審人は、平素から操舵スタンド上の自動操舵装置の電源スイッチを「ON」の状態にしたまま、配電盤の主電源スイッチの操作によって同装置を含む機器の電源繰作を行うようにしていたが、たまたま前日計器修理業者に船尾部に装備された別系統の遠隔操舵装置の故障修理を行わせた際に、船橋スタンド上の自動操舵装置の電源スイッチを「OFF」の状態にしていた。
ところがA受審人は、出航に際していつものとおり配電盤の主電源スイッチを入れたものの、自動操舵装置の電源入力状態を確かめず、また操舵スタンド上の同電源のパイロットランプの表面の汚れもひどくその点滅を識別し難い状態でもあったので、自動操舵装置の電源スイッチが「OFF」の状態であることに気付かなかった。
こうして、A受審人は、離岸時から単独で見張りを兼ねて手動操舵により操船し、霧のため視界が著しく狭められた状態であったので、機関を適宜使用して3ノットの速力で港口に向かった。
01時07分半A受審人は、四倉港沖北防波堤南灯台から260度(真方位、以下同じ。)90メートルの地点に達したところで、四倉港沖北防灘堤南端をつけ回すように左舵10度をとって徐々に左回頭を始めた。同時08分半同灯台から173度60メートルの地点に至って、予定の漁場に向かう084度に向いたとき、操舵を手動から自動に切り替えたが、いつものとおり出航時に配電盤の主電源スイッチを入れたので自動操舵装置の電源が入っているものと思い、操舵切替え後の自動操舵装置の作動確認を行わなかったので、同装置の電源、スイッチが「OFF」状態で舵角が左10度の状態にとられたまま自動操舵に切り替わっていなかったことに気付かず、機関を半速力前進にかけて進行した。
こうして、A受審人は、船橋右舷側窓から目視で入港船の有無を確かめたのち、続いてレーダーによる見張りを行おうとしたとき、01時10分四倉港沖北防波堤南灯台から339度100メートルのところで、その船首が248度を向いたまま、8ノットの速力で四倉港沖北防波堤にほぼ直角に衝突した。
当時、天候は霧で風力1の北東風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、視程は約100メートルであった。
防波堤衝突の結果、船首部を圧壊したが、のち修理された。

(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、霧のため視界が著しく狭められた状態の四倉港を出航中、操舵装置を手動から自動に切り替えた際、切替え後の同装置の作動確認が不十分で、操舵装置が切り替わらず、左回頭しながら防波堤に向かって進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、霧のため視界が著しく狭められた状態の四倉港を出航中、操舵装置を手動から自動に切り替えた場合、切替え後の同装置の作動確認を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、いつものとおり出航時に配電盤の主電源スイッチを入れたので、自動操舵装置の電源が入っているものと思い、切替え後の同装置の作動確認を十分に行わなかった職務上の過失により、自動操舵装置の電源がOFF状態のままで自動操舵に切り替わらなかったことに気付かず、左舵にとられた手動操舵椥態のまま回頭しながら進行して防波堤衝突を招き、船首部を圧壊させるに至った。






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