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1998年(平成10年)

平成9年横審第116号
    件名
漁船第五十一若宮丸貨物船きび丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年11月6日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

半間俊士、川原田豊、西村敏和
    理事官
大本直宏

    受審人
A 職名:第五十一若宮丸一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:きび丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
C 職名:きび丸一等航海士 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)
    指定海難関係人

    損害
若宮丸…左舷船尾外板に凹損
きび丸…右舷船首部外板及びブルワークに凹損

    原因
きび丸…動静監視不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
若宮丸…動静監視不十分、警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、きび丸が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る第五十一若宮丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第五十一若宮丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Bを戒告する。
受審人Cを戒告する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年3月24日23時43分
石廊埼南方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十一若宮丸 貨物船きび丸
総トン数 498トン 290トン
全長 63.72メートル 52.09メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 2,059キロワット 588キロワット
3 事実の経過
第五十一若宮丸(以下「若宮丸」という。)は、専ら活魚運搬に従事する船尾船橋型の漁船で、船長D、A受審人ほか5人が乗り組み、活魚31.5トンを載せ、船首3.8メートル船尾5.2メートルの喫水をもって、平成8年3月22日05時10分愛媛県宇和島港を発し、大分県蒲江港、高知県須崎港及び和歌山県勝浦港に順次寄港したのち、翌々24日08時00分同港を発して神奈川県三崎港に向かった。
D船長は、船橋当直をA受審人が毎10時から02時まで、甲板長が毎02時から06時まで及び自ら毎06時から10時までの時間帯をそれぞれ単独の3直4時間制として行うことに定めていた。
遠州灘で18時00分から単独で船橋当直に就いたD船長は、21時45分御前埼灯台から116度(真方位、以下同じ。)14.1海里の地点で、針路を077度に定め、入港時刻調整のために機関を全速力からやや下げた9.5ノットの対地速力にかけて自動操舵で進行し、このころ昇橋してきたA受審人に針路、速力などを引き継ぎ、神子元島付近は船舶が輻輳(ふくそう)するので不安を感じたらいつでも連絡するように指示し、22時00分同当直を交替して船橋後部にある自室に入った。
単独で船橋当直に就いたA受審人は、航行中の動力船の灯火が表示されていることを確認し、レーダーを12海里レンジとして作動させ、舵輪の右舷側に立って同当直を続け、23時00分石廊埼灯台から239度7.6海里の地点で、左舷船首71度1.6海里のところにきび丸の白、白、緑3灯と、そのやや西側に同船の同航船と思われる2隻の船舶の灯火を初めて認め、一見して自船と同じく神子元島の北側に向かう同航船が3隻いると考えて進行した。
23時18分A受審人は、石廊埼灯台から229度5.1海里の地点に達したとき、左舷船首71度1.0海里にきび丸の灯火を視認することができ、その後同船が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることを知り得る状況であったが、初認したとき同航船と考えて接近することはないと思い、きび丸の動静監視を十分に行うことなく、前方の神子元島灯台を注視して続航した。
23時37分A受審人は、きび丸が左舷側430メートルに接近していが、前示3隻のうち1隻が左舷側近くを追い越したため、同船に気をとられ、依然きび丸に対する動静監視が不十分で、同船と衝突のおそれのある態勢で接近中であることに気付かないまま、警告信号を行わず、同時38分左舷側350メートルに接近した同船に対して、右転するなどの衝突を避けるための協力動作をとらずに進行中、23時43分石廊埼灯台から178度2.4海里の地点において、若宮丸は、原針路、原速力のまま、その左舷側中央部にきび丸の右舷船首部が後方から14度の角度で衝突した。
当時、天候は雨で風力4の北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
D船長は、衝突の衝撃を感じて船橋に行き、事後の措置に当たった。
また、きび丸は、主に苛性ソーダの運送に従事する船尾船橋型の液体学薬品ばら積船で、B及びC両受審人ほか3人が乗り組み、空倉のまま、船首1.2メートル船尾2.8メートルの喫水をもって、同月24日08時00分名古屋港を発し、千葉港に向かった。
19時30分御前埼南西方沖合で昇橋したB受審人は、航行中の動力船の灯火が表示されていることを確認し、2台のレーダーをそれぞれ3海里レンジ及び6海里レンジとして作動させ、単独で船橋当直を引き継ぎ、20時40御前埼灯台から113度40海里の地点で、針路を091度に定め、機関を対地速力9.0ノットの全速力前進にかけ、自動操舵で進行した。
B受審人は、22時00分石廊埼灯台から262度15.5海里の地点で、レーダーにより右舷正横4海里ばかりに若宮丸の映像を認め、その後同船が次第に近づいてくることを知り、この状況下、23時00分石廊埼灯台から250度6.7海里の地点で、しばらく前からレーダーで認めていた、両舷後方の各1個の映像がいずれも同航船であり、自船を追い越す態勢で次第に接近しているのを認めた。
23時18分B受審人は、石廊埼灯台から237度4.3海里の地点に達したとき、右舷正横後5度1.0海里のところに若宮丸の白、白、紅3灯の灯火を初認したが一見して後方からの追越し船と思い、その後若宮丸と衝突のおそれがあるかどうか判断できるよう、コンパス方位の変化を見るなどして、同船に対する動静監視を十分に行うことなく、前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かないで続航した。同時30分同船が方位が変わらず0.5海里に迫っていることに依然気付かず、減速するなどして同船の針路を避ける措置をとらないまま、昇橋してきたC受審人に、自船の針路及び追越し船が右舷後方に2隻、左舷後方に1隻いることを引き継いで同当直を交替し、しばらく在橋したのち降橋した。
23時30分船橋当直を引き継いだC受審人は、B受審人からの引き継ぎで、自船の後方両舷から追越し船があると聞いたこともあって、後方からくる2隻の追越し船の航海灯を認め、近くに存在するのは追越し船2隻だけで、このまま針路を保持すれば安全に追い越してくれるものと思い、右舷方から前路を横切る態勢で接近中の若宮丸を見落とさないよう、引き継ぎにあった船舶の隻数や方位を確認するなど、引き継ぎ内容の確認を十分に行うことなく、若宮丸の航海灯に気付かず、減速するなど同船の針路を避ける措置をとらないまま、23時36分操舵を手動操舵に切り替えて進行中、同時37分相次いで右舷側及び左舷側をそれぞれ追越し船が航過し、同時42分半若宮丸の灯火の光ぼうで右舷側が明るくなって初めて同船に気付き、機関停止に次いで左舵一杯としたが効なく、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
B受審人は、自室で機関停止の音を聞いて昇橋し、事後の措置に当たった。
衝突の結果、若宮丸は、左舷船尾外板に凹損を生じ、きび丸は、右舷船首部外板及びブルワークに凹損を生じ、のちいずれも修理された。

(原因)
本件衝突は、夜間、船舶が輻輳する石廊埼南方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、きび丸が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る若宮丸の進路を避けなかったことによって発生したが、若宮丈が動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
きび丸の運航が適切でなかったのは、船長が、若宮丸に対する動静監視不十分のまま同船の進路を避けずに船橋当直を引き継いだことと、同当直者が、引き継ぎ内容の確認を行わず、見張りが不十分で、同船を避けなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
B受審人は、夜間、石廊埼南方沖合を航行中、単独で船橋当直に当たり右舷方に若宮丸の白、白、紅3灯を視認した場合、同船と衝突のおそれがあるかどうかを判断できるよう、コンパス方位の変化を見るなどして、若宮丸の動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、一見して後方からの追越し船と思い、若宮丸の動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同船が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かないで、減速するなどして衝突を避ける措置をとらず、その状況が次直の船橋当直者に伝えられないまま進行して同船との衝突を招き、若宮丸の左舷船尾部外板並びにきび丸の右舷船首部外板及びブルワークにそれぞれ凹損を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
C受審人は、夜間、石廊埼南方沖合において、前直者から船橋当直を引き継ぎ、単独で同当直に当たる場合、右舷から接近中の若宮丸を見落とさないよう、引き継ぎにあった船舶の隻数や方位を確認するなど、引き継ぎ内容の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、引き継ぎ内容を、自船の後方両舷から追越し船があると聞き、後方からくる2隻の追越し船の航海灯を認め、追越し船はこの2隻だけで、このまま針路を保持すれば安全に追い越してくれるものと思い、引き継ぎ内容の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、若宮丸の存在に気付かずに進行して衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のC受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、夜間、単独で船橋当直に当たり石廊埼南方沖合を航行中、左舷方にきび丸の白、白、緑3灯を視認した場合、同船と衝突のおそれがあるかどうかを判断できるよう、コンパス方位の変化を見るなどして、同船の動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、一見して自船と同じく神子元島の北側に向かう同航船と考えて接近することはなく、前方を注意していれば大丈夫と思い、きび丸の動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同船が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かないで、警告信号を行わず、その後衝突を避けるための協力動作として右転するなどの措置をとることもないまま進行して同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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