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1998年(平成10年)

平成9年門審第114号
    件名
漁船輝神丸漁船勝丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年10月2日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

清水正男、畑中美秀、西山烝一
    理事官
喜多保

    受審人
A 職名:輝神丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:勝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
輝神丸…船首のFRP剥離
勝丸…右舷側中央部外板に破口及び機関に濡れ損

    原因
輝神丸…各種船間の航法(避航動作)不遵守(主因)
勝丸…見張り不十分、警告信号不履行(汽笛不装備)、各種船間の航法(衝突回避装置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、輝神丸が、転舵措置が不十分で、漁ろうに従事している勝丸の進路を避けなかったことによって発生したが、勝丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年3月10日10時48分
山口県川尻岬北方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船輝神丸 漁船勝丸
総トン数 14トン 14トン
登録長 17.40メートル 17.35メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 160 160
3 事実の経過
輝神丸は、小型機船底引網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか6人が乗り組み、操業の目的で、船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成9年3月10日03時00分山口県萩漁港中小畑を発し、川尻岬北方沖合の漁場に向かった。
A受審人は06時00分、長門川尻岬灯台(以下「川尻岬灯台」という。)から330度(真方位、以下同じ。)4.8海里の漁場に至って操業を開始し、その後北東方に移動しながら操業を続け、かれい約30キログラムを獲たところで操業を終え、10時43分川尻岬灯台から001度6.3海里の地点を発進し、単独で操舵と見張りに当たり、針路を108度に定め、機関を微速力前進にかけて徐々に増速し、手動操舵により進行した。
漁場を発進したころA受審人は、正船首1,480メートルのところにトロールにより漁ろうに従事していることを示す形象物を揚げて揚網中の勝丸を初認し、同船に向首して衝突のおそれがある態勢で接近していることを認め、10時44分川尻岬灯台から002度6.2海里の地点に達したとき、機関の回転を全速力と半速力の中間に上げて勝丸の動静を監視しながら、10.5ノットの対地速力で続航した。
10時47分A受審人は、川尻岬灯台から007度6.1海里の地点に達したとき、勝丸に正船首320メートルのところまで近づき、左転して同船を避航することとしたが、10度ばかり左転すれば同船を替わせるものと思い、勝丸と安全に航過できるよう、大きく転舵するなどの措置をとらず、わずかに左舵をとり、そのころ尿意を催したことから操舵室の右側舷側に移って小用を始め、転舵したのちの状況を確かめなかったので、舵効がないまま勝丸に向首して接近していることに気付かず、同船の進路を避けることなく進行した。
A受審人は10時48分わずか前、小用を済ませて前方を見たとき、至近に迫った勝丸を認めたがどうすることもできず、10時48分川尻岬灯台から008度6.1海里の地点において、輝神丸は、原針路、原速力のまま、その船首が勝丸の右舷側中央部に前方から63度の角度で衝突した。
当時、天候は小雨で風力5の南東風が吹き、潮候は高潮時であった。
また、勝丸は、小型機船底引網漁業に従事する汽笛を装備しないFRP製漁船で、B受審人ほか6人が乗り組み、船首0.3メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、同日04時00分萩漁港中小畑を発し、川尻岬北方沖合の漁場に向かった。
B受審人は06時00分、川尻岬灯台から359度4.8海里の漁場に至り、トロールにより漁ろうに従事していることを示す鼓形形象物を掲げて操業を開始し、その後北東方に移動しながら操業を続け、10時30分前示衝突地点に至り、船首を225度に向けて機関を中立として揚網を開始した。
B受審人は、他の乗組員を船首甲板に配置し、左舷側に設置したネットローラーを用いて揚網作業に当たらせ、自らは操舵室前部の左舷側に立って同作業の指揮に当たっていたところ、10時43分右舷船首63度1,480メートルのところから自船に向けて来航する輝神丸を視認でき、その後同船が自船に向首したまま衝突のおそれがある態勢で接近したが、そのころ網の最後部を引き揚げる作業に気をとられ、周囲の見張りを十分に行うことなく、輝神丸の接近に気付かなかった。
10時47分B受審人は、輝神丸が方位の変化がないまま自船に向けて320メートルに接近したが、依然見張りが不十分で、同船に気付かず、汽笛不装備により警告信号を行わず、更に接近しても機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとらないまま揚網中、勝丸は、船首を225度に向けたまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、輝神丸は船首のFRP剥離(はくり)を、勝丸は右舷側中央部外板に破口及び機関に濡れ損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件衝突は、山口県川尻岬北方沖合において、東行中の輝神丸が、転舵措置が不十分で、トロールにより漁ろうに従事して揚網中の勝丸の進路を避けなかったことによって発生したが、勝丸が、見張り不十分で、汽笛不装備により警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、操業を終えたのち、単独で操舵と見張りに当たり、帰港のため山口県川尻岬北方沖合を東行中、前路にトロールにより漁ろうに従事して揚網中の勝丸を認め、その後衝突のおそれがある態勢で接近する状況から、同船を避航しようとした場合、同船と安全に航過できるよう、大きく転舵する措置をとるべき注意義務があった。
しかるに、同人は、10度ばかり左転すれば勝丸を替わせるものと思い、わずかに左舵をとり、大きく転舵する措置をとらなかった職務上の過矢により、舵効がないまま、勝丸の進路を避けることなく進行して同船との衝突を招き、輝神丸の船首のFRP剥離を、勝丸の右舷側中咲部外板に破口及び機関に濡れ損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、山口県川尻岬北方沖合において、トロールにより漁ろうに従事して揚網する場合、接近する他船を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、網の最後部を引き揚げる作業に気をとられ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、輝神丸が衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かず、機関を使用するなどして同船との衝突を避けるための措置をとることなく揚網を続けて同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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