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1998年(平成10年)

平成10年広審第51号
    件名
漁船八幡丸プレジャーボート豊栄丸衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年10月15日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

黒岩貢
    理事官
副理事官 尾崎安則

    受審人
A 職名:八幡丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:豊栄丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
八幡丸…推進器翼を曲損、船底外板に擦過傷
豊栄丸…両舷外板を破損

    原因
八幡丸…見張り不十分、追い越しの航法(避航動作)不遵守(主因)
豊栄丸…見張り不十分、追い越しの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、豊栄丸を追い越す八幡丸が、見張り不十分で、豊栄丸の針路を避けなかったことによって発生したが、豊栄丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年12月27日13時25分
松山港
2 船舶の要目
船種船名 漁船八幡丸 プレジャーボート豊栄丸
総トン数 3.1トン
登録長 10.80メートル 6.19メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 9キロワット
漁船法馬力数 70
3 事実の経過
八幡丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.1メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成9年12月27日05時30分松山港内高浜漁港を発し、興居島東方海域で操業ののち、13時10分給油のため松山港第2区三津地区に寄港し、同時20分帰途に就いた。
13時22分少し過ぎA受審人は、松山港外港2号防波堤灯台(以下「2号防波堤灯台」という。)から079度(真方位、以下同じ。)750メートルの地点に達したとき、針路を四十島に向首する318度に定め、機関を半速力前進にかけ、15.0ノットの対地速力で手動操舵として進行した。
定針したころA受審人は、左舷船首5度1,160メートルに北上する豊栄丸を視認でき、その後同沿を追い越す態勢で接近する状況であったが、そのころ右舷船首方の四十島と陸岸との間を南下していた漁船に気を取られ、見張りを十分に行っていなかったので豊栄丸に気付かず、同船を確実に追い越し、かつ、十分に遠ざかるまでその進路を避けないで続航し、13時25分八幡丸は、2号防波堤灯台から354度1,100メートルの地点において、原針路、原速力のまま、その船首が、豊栄丸の右舷後部に、後方から42度の角度で衝突し、これを乗り切った。
当時、天候は晴で風力2の西風が吹き、潮候はほぼ低潮時で、衝突地点付近には、2.1ノットの南流があった。
また、豊栄丸は、汽笛を装備しない木製のプレジャーボートで、B受審人が単独で乗り組み、たこ釣りの目的で、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同日09時00分松山港内高浜漁港を発し、四十島南方の釣り場に向かった。
09時10分ごろ釣り場に着いたB受審人は、漂泊と潮上りを繰り返しながら、たこ釣りを行い、13時を過ぎ、たこ5匹を釣ったところで帰途に就くこととし、同時19分2号防波堤灯台から354度760メートルの地点において、針路を四十島に向首する347度に定め、機関を全速力前進にかけ、1.9ノットの対地速力で発進し、同時22分少し前同灯台から353度910メートルの地点に達したとき、針路を四十島と陸岸との間に向首する000度に転じて進行した。
発進したときB受審人は、周囲を見回したところ、航行の妨げとなるような他船を認めず、しばらくの間接近する他船はいないものと思い、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、転針直後の13時22分少し過ぎ、右舷船尾47度1,160メートルに四十島に向首したばかりの八幡丸が存在し、その後同船が、自船を追い越す態勢で接近する状況となったことに気付かず、更に接近しても大きく左転するなど衝突を避けるための協力動作をとらないまま続航中、13時25分わずか前右舷後方至近に八幡丸の船首を認めたが、どうすることもできず、豊栄丸は、原針路、原速力で前示のとおり衝突した。
B受審人は、衝突とほぼ同時に海中に飛び込んで難を逃れ、八幡丸に救助された。
衝突の結果、八幡丸は、推進器翼を曲損し、船底外板に擦過傷を生じたが、のち修理され、豊栄丸は、両舷外板を破損した。

(原因)
本件衝突は、松山港内において、豊栄丸を追い越す八幡丸が、見張り不十分で、豊栄丸の進路を避けなかったことによって発生したが、豊栄丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人が、松山港内を航行する場合、左舷船首方の豊栄丸を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、左舷船首方の四十島と陸岸との間を南下していた漁船に気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、豊栄丸に気付かず、同船の進路を避けることなく進行して衝突を招き、八幡丸の推進器翼の曲損及び船底外板に擦過傷を生じさせ、豊栄丸の両舷外板を破損させるに至った。
B受審人は、松山港内を航行する場合、船尾方の八幡丸を見落とさないよう、周囲に対する見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、発進したとき他船が見当たらなかったことから、しばらくの間接近する他船はいないものと思い、周囲に対する見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、八幡丸に気付かず、大きく左転するなど、同船との衝突を避けるための協力動作をとることなく進行して衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。

参考図






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