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1998年(平成10年)

平成10年神審第57号
    件名
漁船第五十八大黒丸養殖施設衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年12月16日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

佐和明
    理事官
副理事官 山本茂

    受審人
A 職名:第五十八大黒丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部右舷側船底に擦過傷を生じたほか、生け簀2基が損傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件養殖施設衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年10月28日18時52分
高知県片島港沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十八大黒丸
総トン数 14トン
登録長 14.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 160
3 事実の経過
第五十八大黒丸は、巻き網船団付属のFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.30メートル船尾1.00メートルの喫水をもって、平成9年10月28日18時40分高知県片島港内の、片島港口灯台(以下「港口灯台」という。)から。50度(真方位、以下同じ。)900メートルの岸壁を発し同県沖ノ島北西方漁場に向かった。
ところで、片島港口から沖合に向かう水路の南側には、港口灯台の南西方700メートルばかりにある咸陽島(かんようとう)から同灯台の方向にかけてほぼ水路に沿うよう、水面からの高さが50センチメートルの生け簀が連なる養殖施設が、約300メートルの長さにわたって設置されており、A受審人は同港に頻繁に入出航していたので、その位置や範囲を十分に承知していた。
A受審人は、発航後船体中央部の操舵室で手動により操舵し、船首部の構造により船首方向に死角を生じることから、これを補うため船首を左右に振りながら進行して港口に向かい、18時48分少し過ぎ港口灯台から308度50メートルの地点に達したとき、針路を宿毛港鼻ノ碆灯浮標を正船首少し右に見る238度に定め、機関を微速前進にかけ、4.0ノットの速力で進行した。
そのころA受審人は、ほぼ船首方向の宿毛港鼻ノ碆灯浮標南側付近に、来航する漁船の両色灯及び白灯1個を視認し、やがて両色灯のうち緑灯が主に見えるようになったので、右舷を対してかわすこととし、18時51分少し前、港口灯台から247度320メートルのところで左舵をとって針路を208度に転じたところ、前示養殖施設に向首する態勢となった。
しかし、A受審人は、微速力前進として航行しているのでしばらくは大丈夫と思い、すでに作動していたレーダーで養殖施設までの距離を測定するなど、船位の確認を十分に行うことなく、同養殖施設に著しく接近する状況となったことに気付かないまま、前示漁船が右舷側に並ぶまでその針路を保つつもりで原針路、原速力で続航中、第五十八大黒丸は、18時52分港口灯台から232度450メートルの生け簀に衝突した。
当時、天候は晴で風力1の北風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
衝突の結果、船首部右舷側船底に擦過傷を生じたほか、生け簀2基が損傷したが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件養殖施設衝突は、夜間、高知県片島港港口付近の水路を西行中、前路の漁船を避けて針路を転じた際、船位の確認が不十分で、同水路南則に設置されていた養殖施設に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、高知県片島港港口付近の水路を西行中、前路の漁船を避けて針路を左に転じた場合、同水路南側には養殖施設が設置されていることを知っていたのであるから、同養殖施設に著しく接近することのないよう、レーダーで養殖施設までの距離を測定するなど、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。ところが同人は、微速力前進として航行しているのでしばらくは大丈夫と思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同養殖施設に著しく接近して衝突し、船首部に擦過傷を生じさせたほか、養殖施設に損傷を与えるに至った。






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