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1998年(平成10年)

平成10年横審第74号
    件名
油送船第三十七玉力丸桟橋衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年12月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

半間俊士
    理事官
大本直宏

    受審人
A 職名:第三十七玉力丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
左舷中央部外板及び0桟橋のドルフィンに軽度の損傷
原因風圧流に対する配慮不十分

    原因
風圧流に対する配慮不十分

    主文
本件桟橋衝突は、風圧流に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年5月17日08時30分
千葉港
2 船舶の要目
船種船名 油送船第三十七玉力丸
総トン数 999トン
全長 79.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,618キロワット
3 事実の経過
第三十七玉力丸(以下「玉力丸」という。)は、推力3トンのバウスラスターを装備した船尾船橋型油タンカーで、A受審人ほか7人が乗り組み、油類積載の目的で空倉のまま、船首1.8メートル船尾3.4メートルの喫水をもって、平成10年5月15日17時00分青森県八戸港を発し、千葉港千葉第4区のコスモPR0桟橋(以下「0桟橋」という。)に向かった。
ところで、0桟橋は、千葉県市原市五井海岸の北東岸沿いにある7本の桟橋のうち最北端に位置し、幅10メートル長さ110メートルで陸岸から北方に伸び、その北端から北右30メートルに、頂部が3.7メートル四方の係留索係止用ドルフィンが設けられ、同ドルフィンと桟僑との間が幅1.2メートルの歩道橋でつながれていた。
A受審人は、翌々17日05時20分千葉港に至り、千葉灯標から229度(真方位、以下同じ。)2,470メートルの地点で仮泊したのち、07時40分入港部署配置を令し、風力5から6の北西風が連吹する状況下、機関長を補佐として操船指揮をとり、07時55分抜錨して市原航路に向かい、機関を半速力前進にかけ、7.0ノットの対地速力として手動操舵で進行し、同航路を航過した08時16分千葉港五井防波堤灯台(以下「五井防波堤灯台」という。)から092度420メートルの地点で針路を111度に定め、減速して機関の後進テストを行い、後進がかかることを確かめたのち、機関を2.5ノットの極微速力前進にかけ、折からの北西風を受けて3.0ノットの対地速力で続航した。
08時20分A受審人は、0桟橋の手前約500メートルに当たる、五井防波堤灯台から101度740メートルの地点で、左舷を対して着桟することとし、右舵一杯をとり、バウスラスターを併用して右回頭を始め、同時24分同灯台から112度1,050メートルの地点に達して207度に向首したとき、機関を微速力後進にかけて行きあしを止め、着桟態勢に入ったが、バウスラスターと機関を併用すれば何とか風圧流を阻止できると思い、空船で右舷側から強風を受けて船体制御が困難となるから、着桟を見合わせるなど、風圧流に対する配慮を十分に行わなかった。
こうしてA受審人は、強風に圧流されながら、08時27分五井防波堤灯台から116度1,100メートルの地点に至り、219度に向首して右舷錨を投下し、このころも依然風圧流が強くて船体制御が困難な状態であって不安を感じたが、右舷錨鎖を延出し、バウスラスター、機関及び舵を適宜使用して着桟すべく操船を続けたところ、右舷側からの強風による船体圧流に抗しきれず、08時30分五井防波堤灯台から118度1,150メートルの地点において、玉力丸の左舷側中央部が0桟橋のドルフィン北西端に衝突した。
当時、天候は雨で、風力6の北西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
この結果、玉力丸の左舷中央部外板及び0桟橋ドルフィンに軽度の損傷を生じた。

(原因)
本件桟橋衝突は、強風を右舷側に受ける状態で千葉港五井海岸の0桟橋に左舷を対して着桟する際、風圧流に対する配慮が不十分で、着桟を見合わせるなどの措置をとらず、同桟橋に圧流されたことによって発生したものである。

(受審人の所為〉
A受審人は、右舷側から風力6の風を受けて千葉港五井海岸の0桟橋に左舷を対して着桟する場合、風圧流が強く船体制御が困難となるから、風圧流に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、バウスラスターと機関を併用すれば何とか風圧流を阻止できると思い、風圧流に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、着桟を見合わせるなどの措置をとらずに、強風に圧流されて桟橋衝突を招き、玉力丸の左舷中央部外板及び0桟橋のドルフィンに軽度の損傷を生じさせるに至った。






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