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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成7年12月20日08時15分 三重県神島南方沖合 2 船舶の要目 船種船名 貨物船第八新生丸
遊漁船第八良栄丸 総トン数 480.21トン
14トン 全長 65.40メートル
18.30メートル 機関の種類 ディーゼル機関
ディーゼル機関 出力 956キロワット
330キロワット 3 事実の経過 第八新生丸(以下「新生丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、空倉のまま船首2.7メートル船尾3.7メートルの喫水をもって、平成7年12月19日16時10分和歌山下津港を発し、愛知県衣浦港に向かった。 翌20日07時52分A受審人は、大王埼東方2海里沖で船橋当直に就き、08時03分鎧埼灯台から102度(真方位、以下同じ。)3.8海里の地点で、神島灯台を3海里離すよう、針路を015度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。 08時12分A受審人は、鎧埼灯台から083度4.1海里の地点に達したとき、左舷船首68度1.0海里のところに前路を右方に横切る態勢の第八良栄丸(以下「良栄丸」という。)を認めたが、一瞥(べつ)して同船船首の波きり具合から速力が速く、自船の前路を無難に航過していくものと思い、代理店宛到着時刻を知らせるなど電語連絡を始め、良栄丸の動静監視を行わなかったので、その後、衝突のおそれが生じていたことに気付かず、警告信号を行わなかった。 A受審人は、電話連絡に没頭し、その後、良栄丸が間近に接近し、同船の動作のみでは衝突を避けることができない状況にあったが、衝突を避けるための協力動作をとらずに続航中、同15分わずか前電話を終えて前方を見たとき、左舷船首至近に迫った良栄丸に気付き、急ぎ機関を停止したが及ばず、08時15分神島灯台から170度7.1海里の地点において、新生丸は、原針路、原速力のままその左舷側前部に、良栄丸の船首が、後方から82度の角度で衝突した。 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、海上は平穏で、太陽の計算高度及び方位角はそれぞれ水平線上13度、南49度東であった。 また、良栄丸は、最大搭載人員32人のFRP製遊漁船で、B受審人が単独で乗り組み、遊漁客7人を乗せ、船首0.2メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、同日06時00分三重県鳥羽市石鏡漁港を出航し、同港の南東側の沿岸で釣りを始めたが釣果がなかったので、同港東南東方5海里ばかりの漁場に移動するため、08時01分石鏡灯台から139度1,000メートルの地点を発し、針路を097度に定め、機関を全速力前進にかけ、18.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。 B受審人は、折から右舷船首方にある朝の太陽光線の影響を受けてまぶしい状況下、08時12分石鏡灯台から102度3.6海里の地点に達したとき、右舷船首30度1.0海里のところに北上中の新生丸を認め得る状況にあり、前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していたが、発進時に航行船が見当たらなかったことから、大丈失と思い、レーダーを活用するなり、サングラスを使用するなどして周囲の見張りを十分に行わず、遊漁客に航海計器の説明をしたり、談笑したりしていて、これに気付かず、同船の進路を避けずに続航中、同時15分わずか前船首至近に迫った新生丸を初めて認めたが、どうするいとまもなく、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。 衝突の結果、新生丸は損傷がなく、良栄丸は船首部を圧壊したが、のち修理され、遊漁客1人が腰部打撲傷を負った。
(原因) 本件衝突は、三重県鎧埼沖において、釣り場移動のため東航中の良栄丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る新生丸の進路を避けなかったことによって発生したが、北上中の新生丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為) B受審人は、三重県鎧埼沖において、船首方向に朝方の高度が低い太陽光線の影響を受けてまぶしい状況下、釣り場を移動するために航行する場合、前路を左方に横切る他船を見落とさないよう、レーダーを活用するなり、サングラスを使用するなどして周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、発進時に航行船が見当たらなかったので、大丈夫と思い、遊漁客に航海計器の説明をしたり、談笑したりしていて、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近している新生丸に気付かず、その進路を避けずに進行して同船との衝突を招き、良栄丸の船首部を圧壊したほか、遊漁客1人に腰部打撲傷を負わせるに至った。 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。 A受審人は、三重県鎧埼沖を北上中、前路を右方に横切る態勢の良栄丸を認めた場合、衝突のおそれがあるかどうか確かめるために、同船の動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、一瞥して同船船首の波きり具合から速力が速く、自船の前路を無難に航過していくものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれがある。態勢で接近し、かつ、良栄丸の動作のみでは衝突を避けることができな、状況になっていることに気付かず、衝突を避けるための協力動作をとらずにそのまま進行して同船との衝突を招き、前示の損傷及び遊漁客を負傷させるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。
参考図
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