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1998年(平成10年)

平成10年横審第50号
    件名
調査船第二共新丸岸壁衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年12月14日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

猪俣貞稔
    理事官
大本直宏

    受審人
A 職名:第二共新丸船長 海技免状:ニ級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
右舷中央部外板に軽い凹傷

    原因
操船・操機(係留索の活用不十分)不適切

    主文
本件岸壁衝突は、岸壁に接舷する際の係留索の活用が十分でなかったことによって発生したものである。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年4月12日07時30分
横須賀港第2区
2 船舶の要目
船種船名 調査船第二共新丸
総トン数 361トン
全長 68.18メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,544キロワット
3 事実の経過
第二共新丸は、財団法人日本鯨類研究所の委託を受けて、鯨類の調査に従事する、可変ピッチプロペラを装備した中央船橋型の鋼製漁船で、A受審人ほか16人が乗り組み、回航の目的で、船首2.5メートル船尾5.8メートルの喫水をもって、平成10年4月10日09時00分関門港小倉区を発し、横須賀港に向かった。
翌々12日06時ごろA受審人は、浦賀水道航路中央第1号灯浮標の手前から操船指揮に当たって浦賀水道航路を北上し、同中央第5号灯浮標を左舷に航過したのち、左転して同灯浮標の西側から同航路外に出たところで、乗組員を入港部署配置に就け、同時55分横須賀港東北防波堤灯台から180度(真方位、以下同じ。)0.2海里の地点で、機関を微速力前進の6.5ノットとして港内を西航し、07時08分横須賀港大地ノ鼻灯浮標(以下「大地ノ鼻ブイ」という。)から026度720メートルの地点で、針路を211度に定め、機関を極微速力前進にかけ、4.0ノットの対地速力で予定バースである長浦ふ頭に向けて進行した。
ところで、長浦ふ頭は、長さが200メートルで、同東側岸壁前面の陸岸が同ふ頭との間に、幅約30メートルの掘り割りを形成し、陸岸北端がふ頭先端の南側80メートルのところまで張り出している状況で、同岸壁奥に第三船が係留していたため、その手前約80メートルのスペースが第二共新丸の予定バースであったものの、同バースには、フェンダー設備がなかった。
07時18分A受審人は、長浦ふ頭先端から00度280メートルの地点で、同ふ頭東側岸壁に向け、同ふ頭先端を40メートルばかり離すように進入針路を170度とし、機関を停止、極微速力前進と繰返し操作しながら対地速力1.5ノットの前進行きあしをもって、同ふ頭北端に接近した。
A受審人は、07時22分長浦ふ頭先端の100メートル手前で更に行きあしを落とし、同時24分行きあしが止まったところで、バウスラスターを使って徐々に右旋回させ、同時27分船首がほぼ岸壁線に沿う205度を向き、右舷船尾が同ふ頭先端に入る少し手前でスラスターを停止し、船首索及び船尾索各1本を岸壁にとらせ、両索の弛(たるみ)みを十分にとらないまま船首を岸壁に近づけようとして、機関を微速力後進にかけたところ、船尾が急速に右に振れだし、岸壁に接触する状況となったので、急いでフェンダーを用意させるとともに、機関を微速力前進、右舵一杯としたが、及ばず、07時30分大地ノ鼻ブイから207度720メートルの地点において、船首が199度を向き、若干後進行きあしがついたとき、右舷中央部が、同ふ頭先端に接触した。
当時、天候は曇で風力3の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
この結果、右舷中央部外板に軽い凹傷を生じた。

(原因)
本件岸壁衝突は、横須賀港第2区の長浦ふ頭東側岸壁に入船右舷着けで接舷させる際、船首尾にとった係留索の活用が不十分で、それらの弛みをとらずに機関を後進に使ったことから船尾が急速に岸壁側に振れたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、横須賀港第2区の長浦ふ頭東側岸壁に入船右舷着けで接舷させる場合、機関を使用する前に船首尾にとった係留索の弛みを十分にとらなかったこと及びフェンダーの準備が遅きに失し、機関を後進にかけたとき急速に船尾が振れて岸壁接触を招き、右舷中央部外板に軽い凹傷を生じさせるに至ったことは、本件発生の原因となる。しかしながら、以上のA受審人の所為は、岸壁にフェンダー設備がなかったことに徴し、職務上の過失とするまでもない。






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