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1998年(平成10年)

平成10年仙審第39号
    件名
遊漁船第七みなとや丸岩場衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年12月15日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

高橋昭雄、安藤周ニ、今泉豊光
    理事官
上中拓治

    受審人
A 職名:第七みなとや丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首右舷外板に凹損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件岩場衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年1月1日14時10分
宮城県塩釜港
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第七みなとや丸
総トン数 12トン
全長 17.85メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 433キロワット
3 事実の経過
第七みなとや丸は、船体中央部に操舵室と客室とが一体となったキャビンを有するFRP製の遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、遊漁の目的で、4人の遊漁客を乗せ、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成10年1月1日06時00分塩釜港籬(まがき)島船溜まりの定係地を発し、07時金華山近くの田代島南東方沖合に至って遊漁を開始した。
ところで、A受審人は、昭和49年から有限会社Aに雇われ、週3回程度金華山周辺海域までの遊漁船の運航業務にあたっており、平素業務がなく家にいるときには、13時から夕方まで昼寝の習慣があり、運航にあたる前日は22時までには就寝することにしていたが、本件発生の前日が大晦日であったことから、昼寝の暇もなく23時ころ就寝し、翌1日05時過ぎに起床して前示のとおり出航した。
13時17分A受審人は、遊漁を終えてGPSプロッターに記録された往路の航跡を逆にたどる針路模様で田代島の仁斗田港防波堤灯台から156度(真方位、以下同じ。)0.9海里の地点を発し、同時22分田代島の三ツ石埼から180度1,000メートルの地点で、機関を全速前進にかけて20.0ノットの対地速力(以下速力は対地速力である。)で自動操舵により帰途に就いた。
A受審人は、操縦席真下の温風ヒーターを含む2台の暖房装置で操舵室及び客室の暖を取り、発航時からキャビン左舷側前部の操縦席に座ってずっと同じ姿勢で前面の窓越しに見張りを行いながら操縦にあたった。14時01分地蔵島灯台から112度3,0海里の地点で、針路をほぼ航路に沿う300度に定めて航路南側境界線の南側を進行した。
ところで、塩釜港の航路付近には多くの小島や浅所が存在し、更にのり、わかめ及びかきの養殖施殻が広範囲に設置されており、小型船舶でも一時的に停止、漂流するには不適切なところで、慎重な操縦を要する海域であった。
ところが、定針後間もなく、A受審人は、暖房の効いた操縦席に座ったままの姿勢で、そのうえ昼寝の時間帯でもあったので、眠気を催すようになり、入港間近でしかも他船の航行も予想され見張り及び保針に注意を要する航路付近を航行中であったが、操舵室入口の引き戸を大きく開けて換気したり顔を出して冷気に当たったり、更に手動操舵に切り替えて起立するなど気を引き締めて操縦にあたることなく、引き続き眠気を催しながら続航した。14時04分少し過ぎ左舷側に高島根灯浮標を航過したころ、17.0ノットに減速し、同時07分塩釜港第1号灯浮標を右舷50メートルに航過して自動操舵により290度に転じたのち居眠りに陥り、同時08分地蔵島灯台から099度1,810メートルの予定転針地点に達したことに気付かないまま進行中、14時10分地蔵島灯台から085度800メートルの沖ノ高遠島南端の岩場に原針路、原速力のまま衝突した。
当時、天候は曇で、風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期にあたり、視界は良好であった。
岩場衝突の結果、船首右舷外板に凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件岩場衝突は、金華山周辺海域での遊漁を終えで帰航する際、小島や浅所が散在する塩釜港の航路付近を航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、緊張を欠いて操縦を続けるうちに居眠りに陥り、沖ノ高遠島南端に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、金華山周辺海域での遊漁を終えて単独で操縦して帰航する際、小島や浅所が散在する塩釜港の航路付近で港内に向けて間もなく眠気を催すようになった場合、入港間近で他船の航行も予想され見張り及び保針に注意を要する航路付近を航行中であったから、居眠り運航とならないよう、操舵室入口の引き戸を大きく開けて換気したり顔を出して冷気に当たったり、更に手動操舵に切り替えて起立するなど気を引き締めて操縦にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、操舵室入口の引き戸を大きく開けて喚起したり顔を出して冷気に当たったり、更に手動操舵に切り替えて起立するなど気を引き締めて操縦にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、緊張を欠いて操縦を続けるうちに居眠りに陥り、沖ノ高遠島南端に向首したまま進行して同島南端の岩場との衝突を招き、船首右舷外板に凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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