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1998年(平成10年)

平成10年函審第58号
    件名
漁船第二十八東宝丸漁船第三十八よね丸衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年12月10日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大石義朗
    理事官
副理事官 堀川康基

    受審人
A 職名:第二十八東宝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第三十八よね丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
東宝丸…船首部に擦過傷
よね丸…右舷側船尾端外板に凹損

    原因
東宝丸…船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
よね丸…警告信号不履行(一因)

    主文
本件衝突は、揚網中の第二十八東宝丸が、揚網中に停留した第三十八よね丸を避けなかったことによって発生したが、第三十八よね丸が、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年2月18日11時00分
北海道羅臼港沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十八東宝丸 漁船第三十八よね丸
総トン数 19トン 19トン
全長 22.20メートル
登録長 18.21メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190 190
3 事実の経過
第二十八東宝丸(以下「東宝丸」という。)は、すけとうだら刺し網漁に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか6人が乗り組み、操業の目的をもって、船首0.6メートル船尾2.3メートルの喫水で、平成10年2月18日06時00分羅臼港を発し、同港沖合の漁場に至って操業を開始した。
10時18分A受審人は、羅臼灯台から125度(真方位、以下同じ。)48海里の地点において、第2回目の揚網を開始し、自ら手動操舵による操船と揚網機の操作に従事のうえ、船首を022度に向け、網を投入していた000度方向へ進行しながら、機関を適宜使用して約0.6ノットの速力で、刺し網を揚収していたところ、同時55分同灯台から121度46海里ばかりの地点に達したとき、左舷船首22度90メートルばかりのところで、自船の投入した刺し網の近くに隣接して第三十八よね丸(以下「よね丸」という。)が投入した刺し網を自船より先に揚収を開始していたよね丸からの連絡で、隣接した刺し網同士が絡み、その絡みを停留してとっていることを知った。
A受審人は、刺し網の絡みがとれるのを待たずに揚収作業を続けていたところ、10時58分停留中のよね丸の船尾方40メートルばかりに接近したが、そのうちに絡みがとれて前進を開始するものと思い、揚収作業を中断するなどして同船を避けることなく、揚収作業を続け、11時00分少し前よね丸との距離が至近となったとき、衝突の危険を感じ、右舵一杯としたが効なく、11時00分羅臼灯台から121度4.6海里の地点において、022度を向いた東宝丸の船首がよね丸の右舷側船尾端に平行に衝突した。
当時、天候は曇で風力2の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。また、よね丸は、すけとうだら刺し網漁に従事する鋼製漁船で、B受審人ほか5人が乗り組み、操業の目的をもって、船首0.9メートル船尾2.4メートルの喫水で、同日06時00分羅臼港を発し、同港沖合の漁場に至って操業を始め、09時45分第2回目の揚網を開始した。
10時55分B受審人は、前示衝突地点付近において、東宝丸が投入した刺し網と自船の投入した刺し網とが絡んでいたことからその絡みをとるため、船首を022度に向け、機関のクラッチを中立として停留したとき、右舷船尾22度90メートルばかりのところに東宝丸を初認し、同船が絡んだ刺し網を揚収しながら自船に向かってくるのを認め、東宝丸に対して無線電話て刺し網の絡みをとっていることを連絡した。
10時58分B受審人は、揚網しながら東宝丸が船尾方40メートルばかりに接近したとき、刺し網の絡みはまだとれていなかったが、そのうち同船が揚網を中断して停止するものと思い、同船に対して警告信号を行うことなく、停留して刺し網の絡みをとっていたところ、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、東宝丸は船首部に擦過傷を生じ、よね丸は右舷側船尾端外板に凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件衝突は、北海遭羅臼港沖合において、揚網中の東宝丸が、揚網中に停留して刺し網の絡みをとっていたよね丸を避けなかったことによって発生したが、よね丸が、警告言号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、北海道羅臼港沖合において、揚網中、停留して刺し網の絡みをとっているよね丸の近くに接近しているのを認めた場合、揚網作業を中断するなどして同船を避けるべき注意義務があった。しかし、同人は、そのうち絡みがとれて前進を開始するものと思い、揚網作業を中断するなどしてよね丸を避けなかった職務上の過失により、同船を避けずに揚網を続けて同船との衝突を招き、東宝丸の船首部に擦過傷及びよね丸の右舷側船尾端外板に凹損をそれぞれ生じさせるに至った。
B受審人は、北海道羅臼港沖合において、停留して刺し網の絡みをとっているとき、東宝丸が揚網しながら後方近くに接近しているのを認めた場合、同船に対し自船を避けるよう促すため警告信号を行うべき注意義務があった。しかし、同人は、そのうち東宝丸が停止するものと思い、警告信号を行わなかった職務上の過失により、同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。

参考図






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