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1998年(平成10年)

平成10年横審第7号
    件名
プレジャーボート宗紀係船浮標衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年9月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

猪俣貞稔、川原田豊、西本敏和
    理事官
関隆彰

    受審人
A 職名:宗紀船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部船底外板に亀裂及び破口、のち廃船、船長が頭部打撲及び顔面挫創、同乗者2人がそれぞれ肩甲骨骨折、顔面裂傷及び顔面挫創など

    原因
操船不適切

    主文
本件係船浮標衝突は、針路保持ができない状況となった際の操船が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年5月17日20時35分
名古屋港第4区
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート宗紀
全長 4.39メートル
登録長 3.92メートル
幅 1.63メートル
深さ 0.75メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 29キロワット
3 事実の経過
宗紀は、製造者形式がFISH-15CUSTOMと呼称する、最大搭載人員4人のFRP製モーターボートで、A受審人が船長として1人で乗り組み、友人2人を乗せ、遊漁の目的で、船首尾とも0.4メートルの喫水をもって、平成9年5月17日20時20分名古屋港第4区の木材泊地の北奥に所在する、名古屋港高潮防波堤中央堤西灯台(以下「中央堤西灯台」という。)から002度(真方位、以下同じ。)3.1海里の係留地を発し、高潮防波堤南側の釣り場に向かった。
A受審人は、友人2人をコックピット内中央にある倉庫の蓋の上に座らせ、自らは操縦席に座り、顔が風防より上方になって風やしぶきなどを直接受ける状態で、左手で操舵輪を持ち、右手でスロットルレバーを操作しながら、貯木場に挟まれた南北に通じる狭い水路を経て、木材泊地北側の水堤切り通しから同泊地に入り、20時31分半中央堤西灯台から008度2.3海里にある第61号係船浮標(以下、各号係船浮標については、番号を付して「ブイ」と表記する。)の西側至近の地点において、針路を180度に定め、スロットルレバーを全開から少し手前の位置とし、12.4ノットの対地速力で進行した。
ところで、木材泊地は、名古屋港埋立地の西3区と西4区に挟まれ、南側を開口とする、奥行き約2,500メートル東西幅約850メートルのコの字型水域で、水深が10メートルに掘り下げられ、東岸から約200メートル隔てたところに、61号ブイを北端として200ないし250メートル間隔で5個の、及び西岸から約250メートル隔てたところにほぼ同間隔で6個の係船浮標がそれぞれ南北に列をなし、東側浮標列の南端に57号ブイが、西側浮標の南端に50号ブイが設置されていた。
20時33分半A受審人は、中央堤西灯台から009度1.9海里にあたる、57号ブイを左舷正横50メートルに見る地点で、同灯台に向首する189度の針路に定め、同速力のまま、右舷船首方の50号ブイを200メートル隔てて航過する状況で進行するつもりでいたところ、折からしぶきが顔に掛かって船首目標としていた中央堤西灯台が視認できず、針路保持ができない状況となったが、短時間のうちに偏位することはあるまいと思い、いったん機関を停止して顔のしぶきをぬぐったうえ、改めて船首目標である同灯台を確認するなど適切な操船を行うことなく、しぶきを避けるために顔を下に向けたとき、無意識に右舵がとられたこともあって、定めた針路から偏位し、緩やかに右回頭しながら50号ブイに向首進行する態勢となったことに気付かず、船首目標を見失ったまま続航中、20時35分中央堤西灯台から006度2,870メートルの地点において、船首が220度を向いたとき、原速力のまま、その船首が50号ブイに衝突した。
当時、天候は晴で風力2の西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
衝突の結果、宗紀は船首部船底外板に亀(き)裂及び破口を伴って船首部が陥没し、のち廃船となり、50号ブイは浮体上部外周に取り付けられた角材に擦過痕を生じただけであった。また、A受審人が頭部打撲、顔面挫創を、同乗者2人がそれぞれ肩甲骨骨折、顔面裂傷及び顔面挫創などを負い、いずれも全治3ないし4週間の治療を要した。

(原因)
本件係船浮標衝突は、夜間、中央堤西灯台を船首目標として名古屋港第4区の木材泊地内を航行中、同灯台を視認できず、針路保持できない状況となった際、操船が不適切で、船首目標を見失ったまま無難に航過する態勢であった50号ブイに向け、偏位しながら進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、中央堤西灯台を船首目標として名古屋港第4区の係船浮標が存在する木材泊地内を航行中、折から顔にしぶきを受けて同灯台を視認できなくなり、針路保持ができない状況となった場合、いったん機関を停止して顔のしぶきをぬぐったうえ、改めて船首目標を確認するなど適切な操船を行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、短時間のうちに偏位することはあるまいと思い、機関を停止して船首目標を確認するなど適切な操船を行わなかった職務上の過失により、同目標を見失ったまま無難に航過する態勢であった係船浮標に向けて右偏しながら進行して同浮標との衝突を招き、船首部船底外板に亀裂及び破口を伴って船首部を陥没させ、また、同人は頭部打撲、顔面挫創を並びに同乗者はそれぞれ肩甲骨骨折、顔面裂傷及び顔面挫創など受傷するに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して、同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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